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メジャーVのデシャンボー、早くもキャリアの岐路?

ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ

東京五輪の男子ゴルフでは世界ランキング111位のサバティーニが銀メダルを獲得=共同

東京五輪の男子ゴルフは、東京に祖父母が住み、母親が日本育ちの台湾人という、日本との関係が深いザンダー・シャウフェレ(米国)が金メダルを獲得した。2位はロリー・サバティーニ(スロバキア)、3位には松山英樹ら7人が通算15アンダーで並び、プレーオフへ。4ホール目で潘政琮(台湾)が、日系米国人を父に持つコリン・モリカワ(米国)を振り切ると、銅メダルを手にした。

シャウフェレ、松山、モリカワらの活躍に不思議はないが、サバティーニの世界ランキングは111位。潘は同135位。国・地域ごとに出場選手の上限が決まっている五輪のルールならではの結果ともいえた。

さて、本来であれば、その争いに加わっていたかもしれない世界ランク7位のブライソン・デシャンボー(米国)だが、そこに彼の姿はなかった。来日前の検査で新型コロナウイルスへの陽性反応を示し、東京五輪出場を断念せざるを得なくなったのである。

彼は「国を代表して戦うことを誇りに感じていたので、非常にがっかりしている」と声明を発表した。誰が感染してもおかしくない状況では不運ともいえたが、ここ4〜5カ月は、そのニュースが小さく映るほど彼を巡ってはゴタゴタが続く。しかも、自業自得というか、責められても仕方のないものばかり。そのことに彼が同意するかどうかわからないが、それを受け入れない限り、彼は同じ過ちを繰り返すのではないか。そんな懸念が頭をかすめる。

改めて2020年9月に始まった彼の今シーズンを振り返ると、前半と後半では実に対照的。新型コロナの感染拡大の影響で9月に行われた全米オープンでは、難コースを力でねじ伏せて話題をさらうと、今年3月のアーノルド・パーマー招待でも、350ヤードのドライバーショットを武器に常識を覆すような戦い方で制し、誰もが彼に一目置くようになった。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったのである。世界ランクも最高で4位まで上昇し、五輪出場権も手にした。

ところがそこから、せっかく時間をかけて築いたものを、自ら放棄するかのような言動が増え、彼に近い人たちでさえ戸惑うほど。

7月の全英オープンのときには、初日に1オーバーと出遅れると、「ドライバーがひどい」と、道具に責任転嫁した。彼に年間何百万㌦というスポンサー料を支払い、彼のために新技術の開発を日々惜しまないクラブメーカーを表立って批判することはタブーといってもよく、同情の余地はない。翌日にはことの重大さに気付いたか、デシャンボーは謝罪し、「後悔している」と語ったものの、本来なら契約破棄をされてもおかしくない事案である。

全英オープンの第1ラウンドで1オーバーと出遅れたデシャンボー=ロイター

一足先に彼の下を離れた人もいる。 デシャンボーは全英オープンの直前、ロケットモーゲージ・クラシックに出場したが、予選落ち。当然といえば当然で、大会前日、長年にわたって彼を支えてきたキャディーのティム・タッカーさんが辞めてしまったのである。ともに、発展的なコンビ解消を主張したが、であるなら、せめて大会が終わってからでも遅くはなかったはず。よほどのことがあったのだろう。

デビュー当時、デシャンボーのキャディーは頻繁に変わった。タッカーさんとも1度、17年にたもとを分かち、翌年から再びコンビを組んだという経緯がある。タッカーさんぐらいしか、こだわりの強いデシャンボーをうまくコントロールできない、ともささやかれていたが、デシャンボーの度重なる理不尽にタッカーさんが三くだり半を突きつけた、という捉え方がもっぱらだ。

元世界ランク1位のブルックス・ケプカ(米国)との不仲も、もはや公然。大会で両者がすれ違ったり、顔を合わせたりするだけでも、周りは緊張する。どっちもどっちのところがあるが、2人は、今年9月下旬に行われるライダーカップ(2年に1度開催される米国と欧州との団体対抗戦)に出場予定。米国代表のキャプテンを務めるスティーブ・ストリッカーは、彼らのエゴをどうさばくのか。それは全体の戦略を考えるよりも気を使うはずで、同情してしまう。

では果たして、ボタンの掛け違いはどこで起きたのか。

それをたどると様々な前兆は、4月のマスターズ・トーナメントで46位タイと惨敗したあたりからうかがえる。何より結果は正直で、4月以降、デシャンボーは9試合に出場しているが、トップ10に入ったのは1回だけ。メジャー大会でも、マスターズ・トーナメントに続く全米プロゴルフ選手権では38位タイに終わり、全米オープンが26位タイ、全英オープンも33位タイといずれも精彩を欠いた。そのメジャー4戦の16ラウンドは、確かにドライバーの飛距離は出ていたが、軌道が安定せず、通算9オーバーだった。

デシャンボーはマスターズでは46位に終わった=ロイター

そうしたもどかしさが引き金となり、不満の矛先がメーカーやキャディーに向かったというのは、構図としては分かりやすいが、それだけなのか。

彼は15年、NCAA(全米大学体育協会)と全米アマチュア選手権を制した。同一年度にこの2つのビッグタイトルを獲得したのは、ジャック・ニクラウス(1961年)、フィル・ミケルソン(90年)、タイガー・ウッズ(96年)、ライアン・ムーア(2004年)に続き5人目。プロでの活躍を誰も疑わず、今年春までは順調にキャリアを積み上げたのに、ここまで崩れた背景には、もっと根深いものがあるのかもしれない。

もちろん、彼には才能がある。しかし、助言に耳を傾ける度量の大きさがなければ、あるいは自分の間違いに気づかなければ、彼は周囲との摩擦に疲弊し、それを発揮できなくなるのではないか。

一度傷ついた信頼やイメージを回復することは、簡単ではない。それをどう取り戻していくのか。彼は今、早くもキャリアの岐路に立っているかのようだ。

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