素早さ激しさ世界基準 ラグビー・リーグワン開幕

横浜・デクラーク、怖がらぬ勝者のメンタル
2019年のラグビー・ワールドカップ(W杯)が残したレガシーは、日本国内にとどまらない。世界から訪れた選手の心の中にも、「日本」というレガシーが刻まれたことは、W杯後に多くのトッププレーヤーが日本のチームに加入したことからもわかる。そんな〝新人〟の中で今季、最も注目されるのが、横浜に入団したファフ・デクラーク(31)だろう。
19年W杯を制した南アフリカ代表のSHで、今秋の欧州遠征でも4試合中3試合に先発した。「W杯で10週間滞在して、本当に日本が気に入った。ここなら住んで何年かプレーできると思った」とデクラーク。しばらく腰を落ち着けようと複数年契約を結んだ。永友洋司GMは「勝者のメンタリティーを若いチームに植え付けられる。しっかり文化をつくってもらいたい」と大黒柱の働きを期待する。1日に公開された練習では早速、仲間のSHたちから請われ、ボックスキックのコツを伝授していた。
ブロンドの長髪をなびかせる貴公子然としたたたずまいとは裏腹に、相手の嫌がるプレーが得意。瞬時の情勢判断にたけ、素早い球出しのためのワークレートも高い。特筆すべきは身長172センチ、体重88キロと小柄ながら、大男にも臆せずタックルを見舞うことだ。
「ラグビーを始めたころから、どのチームでも自分が一番小さい存在。でも父や兄から絶対怖がるな、と教えられた。今ではでかい相手に思いっきりいって、びびらせることを楽しむようになった」。リーグワンでも「小よく大を制す」のビッグタックルで観客を沸かせるだろう。
加入前の5年間はイングランドのチームでプレー。そこでは「雨が多い天候や、スローな展開のラグビーを経験できた」という。日本のアタッキングラグビーにもまれることは、「フィットネス向上につながる。いろんなスタイルのプレーができるオールラウンダーと見てもらいたい」。
リーグワンで鍛錬し、来年のW杯に向けて若手との競争が激しくなっている代表争いを勝ち抜くつもりだ。さらには世界基準のプレーで昨季6位に終わった横浜も引き上げ、台風の目となりたい。
(摂待卓)

三重・マテーラ、屈指の突破 ライバルに披露
激しいコンタクトが繰り広げられる局面で輝きを放つ。FW第3列でボールに絡んでいく強さや突破力は世界屈指。パブロ・マテーラはアルゼンチン代表で90キャップ以上を誇り、近年の強豪国を象徴するような存在だ。そんな大物が鈴鹿を拠点にする2部の三重に加入する。
来日は代表で主将を務めた2019年ワールドカップ(W杯)以来。当時から充実したクラブの環境や速い展開を志向する日本のラグビーに関心を持ち、プレーを望んでいたという。「日本人のスタンダードの高さを改めて感じている。一番成長を遂げている国。ラグビーだけでなく文化や人の素晴らしさに触れてさらにいい選手になりたい」
29歳が積み上げてきたキャリアは華麗だ。15年W杯で4強入りを経験。自国のスーパーラグビーチームやフランスリーグで腕を磨き、ニュージーランドの強豪クルセイダーズでも活躍した。今年はワールドラグビーのベストフィフティーンに選出。「一貫性を持ってどれだけベストパフォーマンスを出せるかを重視してきた。成長できる余地はまだある」と語る。
マテーラにとって2部の強度は物足りないかもしれない。だが「どこと対戦するかは関係ない。展開のスピードは段違いだと思う」と向上心たっぷり。「2部で優勝して1部に昇格させるために力になりたい」。来年のW杯で日本はアルゼンチンと同組。大舞台でライバルとなる世界トップのプレーを今季2部で見られるのはなんともぜいたくである。
(渡辺岳史)

九州・山田、心技一体 西から旋風を
3部の九州に日本代表25キャップの山田章仁が加入した。地元・福岡出身の37歳は「九州への思いは(いつも頭の)片隅にあった。現役でやれる間に戻りたかった」と〝里帰り〟を喜ぶ。
2015年W杯で日本の躍進に貢献した頭脳派のWTB。強豪の埼玉など3カ国の7クラブでもプレーした。そのキャリアはチームで群を抜くが、期待されるのは経験だけではない。
ここ2年で福岡の社会人2チームが休廃部となり、リーグワンで唯一の九州勢となった。「ラグビーの良さ、九州電力の良さを伝えていきたい」と山田。チームの人気拡大だけでなく、競技の普及も自らの使命だと認識する。チームには同郷出身者が多く、「非常にまとまっている」。一体感のあるチームで西から旋風を巻き起こそうとしている。
