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速さの使い方を重視 浦和レディース総監督・森栄次㊦

コンセプトは「スペースのつくり合い」。客がワクワクするサッカーを見せねばと考える=浦和レッズ提供

森栄次が女子サッカーの日テレで監督をしていた2015年からの3年間は、試合で勝てば勝つほど、チケットは売れなくなったという。抜き出た強さが災いするのか、「日テレは勝って当たり前」と客は興がそがれてしまうらしい。

優勝するのは大抵、日テレかINAC神戸。1強、もしくは2強という構図がしばらく続いてきた。「多くのチームが強くならないと、女子サッカーにとってよくないのでは」。指揮の場を浦和へ変えた背景にはそんな葛藤もあったという。

味方同士でスペースをつくり合う。そこへ誰かが入り、ボールも出す。そんなコンセプトを浦和にも植え付けてきた。

ある試合後。前半で交代させられた選手が森ににじり寄り、理由を迫った。いつもの穏やかなトーンで森が諭す姿を、宮崎義正・浦和レディース部長は回想する。「プレーは懸命だけれど、自分で打開するという思いが強すぎ、全体の流れがノッキングしていたから」

この選手はのみこみが早く、じきに周りと調和できるプレーを見せだした。「周りに気を使える」との表現で、スペースをつくり合う感覚を森は求める。

表面的なスピードをやみくもに重視はしない。スペースがどこにあるのか見つけられないくらいなら「スピードアップしない方がいい」とも。肝心なのはスピードの使い方だ。「(チームで)加速するところでは、タンタンタン、と一気にスピードアップ。その変化が相手を戸惑わせるわけで、足や動きの遅い選手でもプレーを速くみせることはできる」と断言する。

スピードの使い方がうまい選手、局面で「こんなプレーもアリ」といったアイデアを出せる選手にはニヤリとする。逆に、速さばかりに頼る選手には「限界があるのでは」と感じてしまうという。

Jクラブや男子の育成年代のコーチも務めてきた。男子も女子もピッチの広さは同じ。ただし「男子はよく(自陣、中盤、相手陣の)3つのゾーンに分けて考えるけど、女子は4つのイメージ」と話す。トップスピードは違うから、一足飛びにゴール前へ運ぶよりも中盤でもう1ステップ、組み立ての時間を設ける方がうまくいくそうだ。

森に言わせると、これはボールを保持しつつ組み立てをするゾーン、「遊べる」エリアがより多いことを意味する。流れるパス回し、緩急の妙、意表をついたプレー、そんな面白みを男子に劣らず披露できるわけだ。

秋から「WEリーグ」としてプロリーグになるだけに、なおさら「お客さんを呼べる、ワクワクするサッカーをしなければ」と話す。スピードとパワーだけでは語れない面白さなら、女子でも十分に訴えられると考えている。=敬称略

(岸名章友)

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