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大谷翔平、シアトルで定まった「構え」 投打で迷いなし

スポーツライター 丹羽政善

試合後、いったんはクラブハウスを後にした大谷翔平(エンゼルス)だったが、ややあってきびすを返すと、ダイニングルームへ消えた。やがて出てきたときには左手に持ったソフトクリームをなめながら、「お疲れさまでした〜」と日本メディアに声をかけて今度は本当に帰っていった。

6月半ば、遠征でシアトルを訪れたときの一コマである。

大谷はあの遠征において、16日は投打の二刀流で出場し、投手としては6回を投げて3安打、無失点で5勝目をマーク。打者としては連続試合安打をキャリアハイに並ぶ11試合に伸ばすなど4打数2安打だった。ところが、17日の休養をはさんで迎えた18日のダブルヘッダー2試合と19日は、無安打に終わっている。

ホームに戻ってから、21日に2本塁打、8打点、22日に8回無失点、13奪三振と派手な活躍をしただけに、ちょっとしたエアポケットのようだったが、振り返れば、翌週以降の序章そのものだった。

まず16日は、別の意味でも目を見張った。その前日、エンゼルスはドジャー・スタジアムでナイターを行ったが、試合がはじまろうとしているとき、フィル・ネビン監督代行はマット・ワイズ投手コーチに声をかけた。

「もう、あしたの先発はシアトルに向かったのか?」

ワイズ投手コーチはこう返している。

「いま、打席に向かっている」

大リーグでは通常、移動の初日に先発する投手は、その前日がナイターであれば前日移動、いわゆる〝前乗り〟が許される。ナイター後に移動すると、到着が深夜2時、3時になることも珍しくないからだ。それよりは、早めに移動し、しっかり睡眠を取って――という配慮だが、大谷の場合、先発しない日は指名打者で出場するためにそれができない。ネビン監督代行は「うっかりしていた」と苦笑したが、その試合で大谷は九回、テイラー・アンダーソンから三塁打を放つなど、フル出場だった。

試合は午後10時頃に終わったので、順調にいけば午前2時半頃にはシアトルのホテルにチェックインできるはずだったが、ちょっとしたアクシデントが起きた。チームバスが球場を離れたのは午後11時過ぎ。ロサンゼルス国際空港までの道のりは幸いにも渋滞しなかったが、不運にも空港の離陸渋滞に巻き込まれた。

午前0時前後、ロサンゼルスからは、到着時に寝不足で目が赤くなることから「レッドアイ」と呼ばれる東海岸へ出発するフライトが多い。エンゼルスのチャーター便はそれに巻き込まれ、いよいよ次に離陸というところで、今度は、着陸機の関係で滑走路の変更を余儀なくされ、別の列の最後尾に並び直す羽目に。結局、離陸まで1時間以上を要し、シアトルについたのは午前3時過ぎ。ホテルの部屋に入ったのは午前4時。大谷も、「朝方に着いた」と振り返った。

それでも、冒頭で紹介したような活躍でチームの連敗を3で止めた大谷。「スケジュール的にもすごくいい状態で臨めている感じはなかった」と明かす一方で、「その割には球も良かったですし、動き的にも良かった」とこともなげ。対照的にネビン監督代行は「24時間前は、ドジャー・スタジアムで走り回っていたのに」と首を振った。

打撃では連続安打を11試合に伸ばし、そのうち4試合で複数安打。その間の打率は3割7分2厘だったが、大谷は「たまたま出ているヒットじゃない」ときっぱり。「しっかりと打っているヒット」と確信を口にしている。

先にも触れたように、休養を挟んで出場したシアトルでの残り3試合は13打数無安打だったので、言葉とのギャップがあったが、大谷が17号本塁打を含む3本の長打を放った28日の試合後、出場停止中のネビン監督代行に変わって指揮を執ったレイ・モンゴメリー・ベンチコーチは「ここ3週間ほど、どんどん状態が良くなっている」と話し、さらに続けた。

「シアトルでは決して数字上は良くなかったが、変化が感じ取れた。それが継続されている」

数字には決して表れないものもあるということか。16打席ぶりのヒットが出た20日から7月1日までの10試合は、打率4割ちょうど。5本塁打、出塁率と長打率を合わせたOPSは1.502。わかりやすい形でモンゴメリーベンチコーチの言葉を裏付けている。

では、何が良くなったのか?

大谷は、「見え方がいい」とシアトルで説明した。その見え方に直結するのが、大谷いわく「構え」。大谷の打撃の根幹をなす要素であり、以前もこんな話をしていた。

「構えがしっかりした方向で力が伝わってないと、(バットが)いい軌道に入っていかないですし、同じように打っていても、最初の構えの時点で間違った方に進んでいると、いい動きをしてもいい結果につながらない」

打撃の原点といってもいい。

「(成否は)8割5分ぐらい構えで決まっているぐらいの感じ。ピッチングもそうですけど、やっぱり、どういうイメージで打席に立っているかが一番大事」

16日は、ピッチングでも手応えを口にした。6イニングを投げて、3安打、無失点、2四球。走者こそ許すも、ランナーを背負うとギアを入れ替え、ことごとく後続を断った。

大谷は試合後、米国記者から真っ直ぐの制球とスライダーについてはどうだったか と聞かれると、「すごく思い通りにいっているというわけではなかった」と言いつつも、「甘く入ってもファウルになるぐらいの球質で投げられていたので、そこはよかった」と納得の表情だった。

それは真っすぐの話なのか。スライダーの話なのか。やや曖昧だったので、取材が終わってから「あれは、スライダーの話か?」と確認すると、大谷は即答した。

「全部です」

今季はスライダーが良くてもスプリットが落ちなかったりと、なかなか全球種がそろって良いということがなかったが、ついにそこにたどり着いた。

その次の先発となった22日には、初回にいきなり連打を浴びたが、その後は八回まで四球の走者を1人許しただけ。13奪三振はキャリアハイ。29日は球数がかさみ、6回途中での降板となったが、5安打、無失点、11三振で、防御率を2.68まで下げている。マリナーズ戦以降の3試合は、19回2/3を投げて、無失点、30奪三振。チームの14連敗を止めた6月9日のレッドソックス戦まで遡ると、連続無失点は自己最長の21回2/3まで伸びた。

もはや、投打において迷いがない。大谷の言葉を借りるなら、それぞれで「構え」が定まったということか。結果には、〝たまたま〟ではなく、実感をともなう。

評価も高まりつつある。Fan Duel、BetMGMといったア・リーグMVP(最優秀選手賞)のオッズを発表しているスポーツベッティング(賭け)サイトでは、大谷が軒並みマイク・トラウト(エンゼルス)らを抜いて、アーロン・ジャッジに次ぐ2番人気に浮上している。

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大谷翔平

大谷翔平の試合結果や個人成績、コラムをまとめました。大リーグ・エンゼルスでの投打二刀流の活躍のニュースを楽しめます。

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