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ラグビー新リーグ、難産のチーム審査の舞台裏

ラグビー新リーグの各チームを1~3部まで振り分ける作業は最後までもつれた(5月のトップリーグプレーオフ決勝)=共同

新しいリーグの立ち上げは難事業だが、来年1月開幕のラグビーの新リーグも例外ではなかった。各チームを1~3部の各リーグに振り分ける審査が最終段階までもつれ、1、2部の1チームずつが入れ替わる結果になった。チームや日本ラグビー協会内では「ファンに納得してもらいやすい振り分けになった」という声が多い一方、協会の情報発信などには改善の余地がある。

1~3部リーグの顔ぶれは2日に各チームに伝えられ、16日の記者会見で発表される。関係者によると、1部の12チームには今年で終了したトップリーグ(TL)の最後の王者パナソニックや、準優勝のサントリー、4強のトヨタ自動車、クボタなどが入った。

審査委報告をもとに、協会の裁定で順位変動

チームの振り分けは、まず協会の審査委員会(委員長=谷口真由美・協会前理事)が事業力や普及活動の内容、今季の成績などで採点。審査委の報告を受けた協会の森重隆会長が最終的な順位を決める規定になっていた。

協会が14日に開いた記者会見などによると、森会長が外部の弁護士とともに谷口氏らにヒアリングを実施。審査委の報告の公平性、中立性、客観性を再検討した。その結果、今季の戦績を点数化する際の計算方法がプレーオフトーナメントで早期敗退したチームに有利な形だったと判断したという。「順位に応じて均等の点差で配分するという各チームとの約束と整合性が取れない形だった」。池口徳也・共同最高事業統括責任者は説明する。

複数の関係者によると、この見直し作業により、審査委が2部と判定したある強豪チームが1部に上がり、TLの下部リーグ所属チームが2部からのスタートに変わったという。

一連の経緯について、チームからの反応はやや分かれる。審査委から高い順位をつけられたチームには谷口氏を支持する声がある。「審査委が1部リーグ入りのハードルを下げなかった結果、積極的に事業に取り組んだり、ホームスタジアムを確保したりするチームが増えた」という意見もある。

逆に、協会の裁定を評価する声も多い。あるチームの幹部は「巨費を投じて日本代表の主力やスター選手を抱えるチームが2部なのはおかしいし、接戦を増やして魅力的なリーグにするためにもプラスの結果になった」。審査委のメンバーが審査に関する情報を一部チームに漏洩した疑惑も生じていたため、「協会が最終的な責任を取ったことで審査への疑念は薄れた」という声もある。

「巨額の強化費を投じているチームが2部なのはおかしい」。最終的な評定については評価する声も多い(ライオンズ戦でのラグビー日本代表)=共同

こうした状況を象徴するような出来事があった。新リーグ運営法人の一部の理事を決める6月の選挙。協会が候補として推薦した谷口氏ら6人を定員の問題で4人に絞ることになり、全24チームで投票を実施。票が割れた末、谷口氏が落選し、当選した森氏が協会と新リーグの会長を暫定的に兼務する体制となった。

最終的に森会長が主導する形でチームが入れ替わったことへの異論は出ている。ただ、トップダウンでの決着という意味では、バスケットボールBリーグの設立時も同じ。当時は審査委を置かず、日本バスケットボール協会会長とリーグのチェアマンを兼務する川淵三郎氏がチームの審査を主導した。

当時と違うのは、審査委という諮問機関と協会との距離感。審査委員長を務めた谷口氏は取材に対し、「審査の過程については話せない」としている。複数の関係者によると、協会が審査委の報告を検証した際、両者の見解は分かれたという。その意味で、協会と審査委のコミュニケーションの取り方や、委員の選定方法などは検証の必要がある。池口氏も「審査そのものをしっかりレビューし、今後に生かせるようにしたい」と話す。

様々なチームや関係者の利害が対立する新リーグの設立は難しい。特に、チームの審査はあちらを立てればこちらが立たず。サッカーJリーグの誕生時も、下部リーグ所属の鹿島の入会を認め、格上のチームを外す決断が論議を呼んだ。Bリーグでも、「代表強化のために最大12チーム」としていた1部のチーム数を川淵氏の判断で16、18と段階的に拡大。それでも2部に落ちたチームの反発があった。

今回はJリーグ・Bリーグのようなプロリーグではないため、チームの事業面と競技力をどう評価するかのバランスを取ることも一層困難だった。「誰がやっても難しい審査だった」は、協会や多くのチーム関係者に共通する感想だ。

審査の過程での情報発信には課題残す

いずれにせよ、曲折を経て1~3部リーグの顔ぶれも運営法人の役員も固まった。16日には各チームの名称なども発表になり、半年後の開幕に向けた本格的な準備が始まる。

今回の新リーグは、プロではないリーグとしては、バスケットなど他競技のときより前進している。チームには1万5000人収容のスタジアムの確保を要求。親会社のヤマハ発動機とは別の法人を設立、プロ化を目指す「静岡ブルーレヴズ」のような例も出てきた。今後は感情的な対立を減らし、建設的な議論をどう進められるか。あるチームの幹部は「チームが割れてしまったところがあるが、これからは1つになって進んでいかなくてはいけない」と話す。

ファンなどの支持を得るためにも、審査に関する情報はより早く公表すべきだとの声がある(トップリーグのトヨタ自動車―パナソニック戦)=共同

審査の過程を通じ、協会の課題も浮かび上がった。外部への情報発信のあり方である。協会が審査委の報告を受けた後、チームの最終順位を決めるまでの手続きは14日まで明確に外部に説明されなかった。規定上は問題がないうえ、複雑な背景を考えると難しい状況だったのは確か。しかし、「ファンら、ステークホルダー(利害関係者)の支持を得るため、もっと早く公表した方が良かったのでは」という声は協会内にもある。

2年前に新リーグ構想が動き出した後、ファンやメディアに向けた情報発信の機会も数えるほどしかなかった。川淵氏を中心にほぼ毎月、ニュースを提供していたBリーグの誕生前とは比べものにならない。

そうした反省を踏まえてか、14日の記者会見では、森会長らが質問がなくなるまで対応した。岩渕健輔専務理事も「足りない部分は真摯に受け止めて、リーグとも連携しながら逐次、情報発信できるようにしたい」と話す。新リーグはラグビーを社会により貢献できる存在にし、ビジネスとして成長させることを目指している。どちらの目標を達成するためにも、外部に向けたより積極的な情報発信や、密接なコミュニケーションが必要になりそうだ。(谷口誠)

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