/

学生なればこそ人生を模索 もがくうち成長

友人と北海道旅行をした大学3年の筆者㊥

新型コロナウイルス禍で学生も大きな影響を受けている。友人と青春を謳歌する、という当たり前の生活を長期間送れず、本当にふびんだ。多くの人々にとって大学時代は何にも縛られることなく、自分の時間をデザインできる最初で最後の期間だというのに。

私の場合、箱根駅伝出場を目指して体育会中心だった前半と、大きな故障で退部し一般学生として過ごした後半のそれぞれ2年で生活は大きく変わった。

退部直後は、今後どのように日々を過ごすか悩んだけれど、心配は杞憂(きゆう)に終わった。大学には全国から多種多様な学生が集まっており、さまざまな刺激に遭遇した。学生運動の集会を大した思い入れもなく冷めた気持ちでのぞくと、客観的には空理空論に思えたものの、ものすごい熱量で語る学生の気迫に「自分も何かをしなければ」と心を突き動かされた。また青春18きっぷという格安切符を手に全国各地を旅して回り、地方の何気ない日常を見るにつけ、将来自分は何をすべきかと思い悩んだ。

アルバイトも実社会を垣間見るよい機会だった。夜通しでベルトコンベヤーから流れる重い荷物をひたすら仕分けたこともある。重労働の疲れを経験するとこれを仕事とする人々がどれほど苦労しているかを実感したし、中学受験の学習塾での講師では夜遅くまで塾通いをする子供たちの姿から現代の教育システムの矛盾も感じた。

当時の自分の周囲の学生は程度の差こそあれ、大学の授業に出るよりも学外のことで忙しくしていたように思われる。そうした数々の経験を通して、自分自身がどのような人間で、何ができるのだろうか、と人生の模索を続けた。

のちに迎える就職活動においては、体育会を途中退部し、あなたは大学生活で何に打ち込んだのか理解できないと苦言を呈された。その際には、あのまま退部せずにもう2年間体育会で我慢して過ごしておけばよかったかなと後悔もした。

ただ最近になって、手探りで培った学生時代の経験こそが人生の岐路における判断材料になり、行動の指針になるのだと意義を感じるようになった。あの頃は眼前に果てしなく広がる自由な時間をただやみくもに泳いでいるようで、一体何をしているのかわからないままだったけれど、確実に自分は成長していた。

コロナ禍では不自由も多い。ただ、人と人との出会いが制限されている今だからこそできることもある。オンラインでいろんな出会いを生むこともできるし、読書の時間も存分に取れるだろう。自分も司馬遼太郎さんの「竜馬がゆく」のような名著に学生時代から出合っていたなら、もっと違う人生を歩んでいたかもしれない。

いまの学生のみなさんは、コロナ禍が去った折にはぜひともリアルな経験を積んでほしい。すでに明確な将来像を描けている学生などごくまれだ。将来のためにどのような経験をすればよいか、と最初から思い悩む必要などない。目標などあいまいでも能動的な思いで取り組んだ経験は何であれ、その後の人生の血となり肉となる。いまの一瞬一瞬は、本当に貴重で尊い時間。あきらめることなく全力で精いっぱい、駆け抜けてください。

(プロトレイルランナー)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン