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新作厚底でナイキ追う 老舗アシックス、2種類で勝負

(更新)

ナイキの牙城を崩せるかーー。陸上長距離界を席巻している厚底シューズ分野で、アシックスが満を持して新製品を投入した。ストライド(歩幅)とピッチ(脚の回転数)に着目し、約1年をかけて開発。「総合ランニング企業」を目指す老舗がトップ選手向けの復権をかけて勝負に出た。

「なんとしてもナンバーワンの地位をトップアスリートのところでも取りたい」。3月30日の発表会で広田康人社長の言葉は熱を帯びた。ベールを脱いだ「メタスピード」シリーズはストライド型に適した「スカイ」、ピッチ型に対応した「エッジ」を展開。いずれも軽量カーボンプレート搭載の厚底だが、走り方に合わせて2種類をそろえたところに最大の特徴がある。

同社スポーツ工学研究所の谷口憲彦さんは「走速度を上げる際にストライドが大きく変化する選手と、ピッチとストライドが上昇する選手がいたことが新たな気付きだった」と語る。スピードはストライドとピッチのかけ算で導き出せるが、その因数はランナーによって異なり、トップ選手ほど個性が出てくる。ならば「アスリートがシューズに合わせるのではなく、シューズがアスリートのスタイルに寄り添うことが大切」という考えに行き着いた。

ミッドソールには同社で最も反発性が高いものを初採用。「スカイ」(男性用、かかと33ミリ/前足部28ミリ)は「エッジ」(同29ミリ/21ミリ)より厚く、かかとと前足部の差も小さい。前足部のカーブ角度をシャープにすることでストライドが伸びやすい構造にした。一方、「エッジ」は脚の回転を妨げないように調整。昨年発売したレース用シューズ「メタレーサー」はエネルギー効率が主眼に置かれていたが、「スカイ」は跳ねるような感覚があり、「エッジ」は脚をリズム良く前に運びやすい印象だ。

走り方の特徴に応じた2種類の新作シューズを発表したアシックスの広田康人社長㊥(3月30日、東京都江東区)

同社の実験では従来のシューズと比較して「スカイ」で約350歩、「エッジ」で約750歩少なくフルマラソンを走れる推定結果が得られたという。開発担当の竹村周平さんは「歩数が減って着地衝撃が減るので疲労感も軽減される」と話す。

1年の開発過程では多くの選手の声を反映させてきた。女子長距離のサラ・ホール(米国)が2020年ロンドンマラソンで2時間22分1秒をマークしたのをはじめ、海外選手がプロトタイプを着用して自己ベストを更新。国内でも川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)が2月のびわ湖毎日マラソンで自身初の2時間7分台を記録して話題を呼んだ。

8年ぶりに自己ベストを出した川内は「スカイ」のプロトタイプを着用。「アシックスがついに技術力を発揮して開発してくれたおかげで復活どころか、そのさらに上の進化をできた」。特長の異なるシューズがラインアップされたことにも「選ぶ楽しさが増えたことは大きい」とも指摘する。

過去の五輪で多くのメダリストの足もとを支えてきたアシックスは近年、トップアスリートの分野で後じんを拝している。エリートレースでは薄底から厚底へのパラダイムシフトを起こしたナイキの1強が続き、18年以降で4度の日本記録更新はいずれもナイキのシューズを履いた選手が打ち立てたものだ。

「トップ層の市場はそれほど大きくないが、影響力は大きい。そこでしっかりポジションをとることがランニング分野では必須であり、(現状に)風穴を開けて食い込みたい」。「我々は挑戦者」と語る広田社長は地位奪還へ意欲を燃やす。

シューズ性能や技術の高さを広く示すにはアスリートのパフォーマンスも大きく影響してくる。3カ月後に開幕が迫る東京五輪でも「かなり有力な選手が履いて出てくれるのではないかと期待している」と広田社長。新たな挑戦が勢力図を変える一手となるだろうか。

(渡辺岳史)

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