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メジャー帰りの田中将が描く第3章

あらゆるコースに投げ分けて変化球の効果を高める田中将の投球術は健在だ(1日)=共同

メジャー帰りの選手といえば、かの地で結果を残せず、夢破れて帰国というケースが多い。そこからの〝余生〟は寂しいものになりがちだが、そういうわびしさとは無縁なのが2021年、8年ぶりにプロ野球楽天に戻り日本球界復帰を果たした田中将大。ヤンキースのエースに君臨する力を保ったまま帰還し、その看板にたがわぬ投球術で、待ちわびた日本のファンをうならせている。

復帰後初戦は4月17日、東京ドームでの日本ハム戦。一回、2死から3番近藤健介への直球が全て高めに浮き、ストレートの四球。続く中田翔には高めの154㌔を打たれ、2ランとされた。二回に石井一成に右翼席に運ばれたのも高めの直球だった。

しばしば浮いて「全然良くなかった」という直球に見切りを付け、スライダーとスプリットの出し入れで三回以降、危なげなく抑えたのはさすが。ただ、5回3失点で黒星がつき、12年8月から続いていた日本のレギュラーシーズンでの連勝は28でストップした。

本拠地で日本通算100勝を達成

2戦目は4月24日、楽天生命パーク宮城での西武戦。序盤で安定感を欠いたのは前回と同じだったが、この日は後半に直球の割合を増やして「投球の幅を持たせる」ことを重視し、6回1失点。地元ファンに復帰後初勝利と日本通算100勝を届け、「チームメート、ファンの方々と勝利(の喜び)を分かち合えたことがうれしい」と話した。

楽天復帰後、初の本拠地登板で日本での通算100勝を達成し、記念のボードを掲げる田中将(4月24日)=共同

好調時のうなりを上げるような直球はまだ少ないが、あらゆるコースに投げ分けることで変化球の効果を2倍にも3倍にも高める投球術は健在だ。

5月1日、本拠地でのロッテ戦。一回、レオネス・マーティンにストライクゾーンへのスライダーを振らせて追い込むと、低めのスプリットで空振り三振に。3球目と同じくストライクゾーンに行くと見せかけて、曲がり幅の大きさで空振りを誘った。

二回2死一、二塁ではフルカウントから江村直也に4球ファウルで粘られたが、この間、直球はストライクゾーンから外れず、変化球はきわどいコースへ。最後は内角の直球を振らせて三振に仕留めた。根負けしないどころか、いくらでも粘ってみろといわんばかりの制球力だった。

六回、2死一塁になった時点で投球数は97。この回でお役御免と悟ったのか、ここから満身の力で腕を振る。アデイニー・エチェバリアを直球2球で追い込み、続く100球目も146㌔の直球。外角低めをファウルにされたが、遊び球なしに3球勝負を挑んだ。最後はスライダーで三振。スタミナが減った状態でギアを上げながら、フォームもコントロールも一切、乱れなかった。

6回を被安打5、奪三振6で無失点。ピンチをピンチと思わせない落ち着きと制球力は最後まで変わらず、「己に負けなかった」と田中将。

3月に右ふくらはぎを痛め、開幕3連戦で予定されていた登板は持ち越しに。4月17日に今季初登板を果たしたものの、けがの影響が残っていたのか、試合後は「メカニック(動きの構造)が良くない」と話していた。

2戦目は途中から、左足を上げきったところで一瞬止めるフォームに変更。「今はとりあえず、ああいう感じで投げた方がいいんじゃないかと」。試行錯誤を経て、3戦目は左足を止めずにステップする動きに戻した。体の各部位が滑らかに連動する姿から、理想の投球動作に近づいていることがうかがえた。

高まる期待にも泰然

田中将と同じく、まだ十分に米大リーグでやっていける力がありながら日本に戻った一人に黒田博樹がいる。14年オフ、ヤンキースからフリーエージェント(FA)となり、米国残留なら20億円前後の年俸を手にする可能性があった中、推定4億円で古巣広島に復帰。その「男気」ぶりで声価を高めた。

田中将がヤンキース時代に同僚だった黒田が日本復帰後の活躍を当然視されたように、脂が乗った状態で帰ってきた田中将も「活躍できて当然」という目で見られる。東日本大震災の発生から10年の節目に楽天に戻ったことも、ファンの期待を高めている。

もっとも、本人は期待をただ期待として受け止めるまでで、それを重圧に感じたり、日本復帰で感傷に浸ったりすることはないようだ。今季初勝利後、球場の光景を見た感想を問われた田中将は「特にないですかね」と話し、続けた。「皆さんが思っているようなストーリーは僕にはないと思う」

自身が投げることで結果としてつづられる物語は、それを読むファンが楽しめばそれでいい――。希代の「大作家」は、プロ入りからの楽天時代、大リーグ時代に続いて壮大なものになるであろう現役生活の第3章を泰然と過ごしている。

(合六謙二)

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