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型破りなゴルフで頭角 ニーマン、勝利に貪欲な理由

ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ

打ち方は個性的、攻め方はアグレッシブなニーマン=USA TODAY

ここ3年ほど男子ゴルフの勢力図は、世界ランキングを通して見たとき、それほど上位陣に明確な変化は感じられない。2018年のマスターズ・トーナメント直後(4月8日)のランキングでは、ダスティン・ジョンソンが1位で、2位がジャスティン・トーマス(ともに米国)。4位がジョン・ラーム(スペイン)で、7位がロリー・マキロイ(英国)という顔ぶれだった。現在はどうかといえば、1位にはジョンソンが変わらず君臨し、ラームが2位、トーマスが3位、マキロイが6位となっている。

英語には「多くが変われば変わるほど、同じであり続ける」というフレーズがある。まさにその通りとなっているものの、足元では様々な変化が起き、それを観察することは時間の無駄ではない。特にこれまで、決してゴルファーの〝産地〟としては知られていなかったチリから、興味深い選手が頭角を現している。

その選手の名をホアキン・ニーマンという。スイングのメカニックはおよそ他の選手とは異なり、トップで切り返してから、右にぐっと上半身を傾けながらボールを捉える打ち方はなんとも個性的。コースの攻め方も、戦略的というよりはピンをデッドに狙うアグレッシブなタイプだ。いろんな面で型破りで、米国や英国など多くのトッププロを輩出してきた国の選手とはスタイルがまるで異なるが、優勝へのモチベーションもアグレッシブで、裏には特別な事情もある。

実は20年秋、彼は生まれたばかりのいとこが、脊髄性筋萎縮症という珍しい難病に侵されていることを告白し、200万㌦(約2億1000万円)以上という治療費の支援を呼びかけた。ただ、一般的にはまだ無名ゴルファー。19年にチリの選手としては初めて米ツアーで勝利を挙げたものの、台頭する多くの若手の一人であり、そこに埋もれ気味でもあった。

それではいくら支援を訴えたところで声が届かないと無力感を覚えたニーマンは、まずは、勝つことでその賞金を治療費の足しにしようと考えた。さらに勝ちを重ねることで名前が知られれば、耳を傾けてくれる人が増え、寄付も集まるのでは、と思い至った。

言うは易し行うは難し。米ツアーでは、世界のトップがしのぎを削っているのだ。嘲笑が聞こえてもおかしくなかったが、彼はいたって真剣。がむしゃらに勝ちにこだわる。

よって年明けからセントリー・チャンピオンズとソニー・オープンで連続2位になったときには、「少しは(金額的な)目標に近づけた」と話したものの、悔しさを隠さなかった。

セントリー・チャンピオンズでプレーオフの末、2位に終わったニーマン(左)=AP

彼は両トーナメントの舞台となるハワイ入りの直前、検査で新型コロナウイルスへの感染が判明し、10日間の自主待機を迫られた。調整が大幅に狂ったことなどを考慮すればむしろ大健闘だが、セントリー・チャンピオンズではプレーオフ1ホール目のセカンドショットを左に曲げ、そのミスが響いて2位。ソニー・オープンでは、惜しくもケビン・ナ(米国)に競り負けて2位タイに終わった。いずれも手に届くところにあった優勝がその手をすり抜け、天を仰いでいる。

ただ、ニーマンはこの2週で136万9400万㌦を稼ぎ出した。また、昨年秋にいとこを助けるために立ち上げたファンドでは、バーディーの場合は5000㌦、イーグルの場合は1万㌦を寄付すると宣言し、RSMクラシック(昨年11月)とマヤコバ・クラシック(同12月)の2試合では、賞金などを含めると25万㌦以上を積み上げている。徐々にではあるが支援の輪も広がり、1月31日現在、「GoFundMe」というクラウドファンディングを通した一般からの寄付も20万㌦を超えた。 

もっとも、今の勢いであれば、彼は早々に目標額を超えてしまうかもしれない。そもそもデビューしてからの活躍は目をみはる。

彼はもともと、アマチュア界で知られた選手で、17年5月から翌年4月まで44週にわたってアマチュアの世界ランキング1位に君臨した。18年4月、プロに転向して初めて出場したバレロ・テキサス・オープンでいきなり6位に入り、6週後のメモリアル・トーナメントでも6位タイ。結局、プロ転向後の12試合で4度もトップ10入りを果たすと、 翌シーズンのツアー出場権を手に入れた。

世界ランクを20位台に上げ、多くのファンを魅了するニーマン=USA TODAY

世界ランクも右肩上がり。冒頭でも触れた18年4月8日、彼の世界ランクは1527位だったが、18年の終わりには155位にまで順位を上げ、19年の最後は58位だった。そして、ハワイでの2戦を終えた時点で、彼は自己最高位の25位まで順位を上げている。

19年12月にはプレジデンツカップ(2年に1度の欧州を除く世界選抜と米国選抜の団体対抗戦)に出場し、今年夏に行われる東京五輪への出場も濃厚。彼は今、ゴルファーとしても人間としても、多くのファンを魅了している。

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