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ミケルソン、笑みでファン魅了 失敗にも「彼らしい」

ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ

全米プロ選手権を制し、笑顔でトロフィーを掲げるミケルソン=AP

男子ゴルフのフィル・ミケルソン(米国)を見ていると、英国の女性作家ジョージ・エリオットのこんな言葉を思い出す。

"Wear a smile and have friends; wear a scowl and have wrinkles."(ほほ笑めば友だちができ、難しい顔をしていたら、しわができる)

彼のキャリアを振り返れば、62をマークしようが、82をたたこうが、そこで見せる笑みにファンは魅了され、癒やされてきた。

今回もまさにそう。先日、史上最年長の50歳でメジャー大会の一つ、全米プロ選手権を制した。プレー中はサングラスをしていたので、さほどその表情をうかがい知ることはできなかったものの、優勝トロフィーを掲げての笑みは、またたく間にSNS(交流サイト)などを通じて、世界中に広まった。

 最終日の18番、左のラフからの2打目をグリーンに乗せると、図らずもファンが彼を囲むようにしてグリーンまで行進することになったが、他の選手でもあの熱狂が起こりえたかどうか。もちろん、ややファンは調子に乗りすぎ。一緒に回っていたブルックス・ケプカ(米国)は人波にもまれ、グリーンへたどり着くのにかなりの時間を要した。しかも、ファンに押されるなどして、3月に手術したばかりの右膝をさらに痛めたよう。

全米プロ最終日の18番でミケルソンと共にグリーンへ向かって歩くファンたち=USA TODAY

それに対して主催の米PGAツアーも、観客をコントロールできなかったことを謝罪したが、それによってミケルソンの快挙の価値が薄れるわけではない。おそらくあの大行進は、後世まで語り継がれ、ミケルソンのキャリアの中でも、一つの象徴として人々の記憶に刻まれることになるのではないか。

それにしてもファンをひきつける彼の魅力とは何なのだろう。これまで何度か触れてきたが、もちろん、メジャー6勝などゴルファーとしての実績があるからこそ、その笑みが引きたつ。スタイルもファンを魅了。リスクマネジメントという大人のゴルフとは無縁でいつも果敢に攻め、それはもろ刃の剣でもあるが、うまくいったときの表情は子供のように喜々として、見るものにゴルフの楽しさを教えてくれる。

もっとも、その彼の子供のような一面は、コースに張り巡らされたロープの中だけでなく、私生活まで含めると多岐にわたり、一部の言動は物議を醸すこともしばしば。

2014年のライダーカップ(2年に1度開催される米国と欧州との団体対抗戦)で負けたときには、キャプテンだったトム・ワトソン(米国)の采配を公然と批判した。しかし、ミケルソンは1995、2002、04、06、10、12年のライダーカップにも参加して、敗戦を経験している。その6戦に関しては、特にキャプテンやチームの戦い方を批判していないのに、なぜ14年だけ疑問を呈したのかは、根拠が曖昧なままだ。

18年の全米オープンの第3ラウンドでは、カップをオーバーして止まらないボールを先回りして打ち返し、2打罰を受けた。止まったところから打っても2打ではホールアウトできないかもしれない。ならばペナルティーを受けたほうがダメージは少ない――という計算が働いたようだが、それはゴルフの精神を冒瀆(ぼうとく)しているとして、失格にすべきだとの声さえあった。

16年には米証券取引委員会(SEC)から、インサイダー取引に関連して得た利益約100万㌦(約1億900万円)の返済を求められている。これはもともと、同じ事件に絡んで有罪判決を受けたギャンブラーのビリー・ウォルターズ氏から勧められて株を購入したという経緯がある。子会社の分離・売却の発表で株価が上昇し、そのタイミングで得た売却益を用いて、ギャンブルでの借金をウォルターズ氏に返済したというから、際どい橋を渡ったものだ。

また、ミケルソンはちょうど1年ほど前に明らかになった「プレミアゴルフリーグ」構想をサポートする。一度は構想が頓挫しかけたが、今も舞台裏で準備が進められている様子。危機感を募らせる米ツアーは強く反発し、同リーグに参加する場合、米ツアーのメンバーシップを剝奪し、メジャー大会への参加資格も失うことになると警告している。にもかかわらず、ミケルソンは今なお、参加に前向きだ。

失敗も含めて人間臭さが魅力のミケルソン=USA TODAY

いずれも疑問符がつくが、ミケルソンの場合、失敗も含めて、人間臭さがある、彼らしい――で片付けられてしまう。プロアスリートはこうあるべきだという姿勢を忠実に守ってきた選手が、ギャップも相まってか、1回の失敗で多くを失うケースがあるのとは対照的。普段から型にはまらない生き方をしているミケルソンにとっては、勲章のようになってしまうから不思議だ。

それもしかし、彼が築いてきたものであるし、負の面を補って余りあるプラスを、彼がゴルフ界にもたらしてきたからといえよう。そして何より、彼の飾らない笑みがそれを可能とするのかもしれない。

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