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孫の養育、祖母の監護申し立て認めず 最高裁初判断

(更新)

事実上孫を育ててきた祖母が、養育を担う「監護者」に自分を指定するよう、裁判所に申し立てることは認められるか――。こうした点が争われた家事審判で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は31日までに、認められないとの初判断を示した。監護者の指定の申し立ては父母にしかできないとした。

監護者は子の養育をする人。父母が監護者になることが多いが、離婚などを背景に祖父母ら第三者が監護者となることもある。

父母が離婚の際に裁判所に申し立てて第三者を監護者に指定することはできる。一方、その申し立てを第三者自身ができるかどうかは判例が割れていた。最高裁が民法の規定を厳格に判断した形だが、専門家には「父母に問題があれば第三者の申し立ても認めるべきだ」との意見もあり、法制審議会(法相の諮問機関)でも関連の議論が始まっている。

今回問題となったのは、未成年の子について離婚後に親権を持った母親が多忙で、母方の祖母が主に世話をしていたケース。母親は再婚相手とともに子の養育を望んだが、祖母が反対し、子も祖母との生活を続けたいと希望した。祖母が自身を監護者に指定するよう、裁判所に家事審判を申し立てた。

一審・大阪家裁はこれまでの養育の実績を考慮して祖母を監護者に指定した。二審・大阪高裁も、子が祖母との生活を望んでいた事情などから「監護者指定の判断は子の福祉を最も重視すべきだ」として一審を是認した。母側が最高裁の判断を仰いでいた。

民法は、父母が協議離婚をする際、子の監護者などは父母が協議して決めると規定し、その協議が不調なら裁判所が判断するとしている。

第1小法廷はこの規定を巡り、父母が家裁に申し立て、審判で判断するものだと解されると指摘。「子の利益は最も優先して考慮しなければならないが、第三者の申し立てを許す根拠にはならない」とし、祖母による申し立ては認められないと結論づけた。

最高裁の決定は29日付で、裁判官5人全員一致の意見。同小法廷は面会交流の家事審判についても、同日付の別事案の決定で「父母以外は申し立てができない」とした。

今回の最高裁決定について、ベテラン裁判官は「第三者に申し立てを認めることについて、最高裁は『法の解釈を超えている』と判断した」とみる。民法の規定を厳格に適用したとの見立てだ。一方で、児童虐待など親権が停止される事態にまでは至らないものの養育能力に懸念がある父母が世話を望むケースでは、子供が不安定な環境に置かれる可能性もある。

裁判官や大学教授ら専門家でつくる家族法制の研究会は2月公表の報告書で、こうした事態を念頭に、第三者による申し立ての是非を検討するよう提言した。

離婚後の養育を巡っては法制審が制度の見直しに着手しており、30日に初会合が開かれた。最高裁の今回の判断はあくまで現行民法が前提で、法制審では専門家の意見も参考にしつつ、民法のあり方が再検討されるとみられる。

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