路線価6年ぶり下落 21年分0.5%、観光地・繁華街で顕著

国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2021年分の路線価(1月1日時点)を発表した。全国約32万地点の標準宅地は全国平均で前年に比べ0.5%下落した。新型コロナウイルスの影響で観光地や繁華街などがマイナスに転じ、6年ぶりに前年を下回った。
都道府県別では39都府県が下落し、東京や大阪、愛知などの13都府県がマイナスに転じた。下落率が最も大きかったのは静岡の1.6%で、1.4%の岐阜や愛媛などが続いた。

都道府県庁所在地の最高路線価は22都市で下落し、前年の1都市から大幅に増えた。インバウンド(訪日外国人)の増加で上昇が続いていた観光地などで反動減が目立つ。
下落率が最も大きかったのはインバウンド需要が激減した奈良市。前年の21.2%プラスから一転、12.5%マイナスとなった。次いで神戸市がマイナス9.7%。20年に上昇率トップ(40.8%)を記録した那覇市もマイナス1.4%に転じた。
路線価の全国トップは36年連続で東京都中央区銀座5の文具店「鳩居堂」前だったが、前年を7.0%下回り、12年以来9年ぶりに下落した。価格は1平方メートルあたり4272万円だった。
国税庁は新型コロナの影響で地価(時価)が大幅に下落し路線価を下回ったとして、20年7~9月分と20年10~12月分の大阪市内の路線価を減額補正(下方修正)した。
路線価は1月1日を評価時点として公示地価の8割程度に設定しているが、国税庁の担当者は「1月1日以降も緊急事態宣言の発令など社会経済の不透明感がある」と指摘。路線価を基に相続税などを算出する人に不利益が生じるのを防ぐため「年の途中で大幅に地価が下落すれば、20年分と同様に補正を検討する」と話した。