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ネット中傷対策強化 相談窓口と捜査を直結、官民連携も

(更新)

総務省がインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策を強化する。投稿削除の相談といった従来の対応に加え、悪質なケースでは警察との連絡体制を強化し、相談窓口を捜査機関と直結させてトラブルの抑止を目指す。子どもへの予防教育を進める企業が出るなか、民間との連携も強め、深刻な被害を未然に防ぐ環境づくりを急ぐ。

政府は30日、SNS(交流サイト)などでの誹謗中傷に関する相談体制の充実を盛り込んだ「第4次犯罪被害者等基本計画」を閣議決定した。

木村花さんのTシャツを着た母の響子さん。花さんへの中傷が対策強化の契機となった(30日、東京都千代田区)=共同

かねて総務省は、運営する被害相談窓口「違法・有害情報相談センター」で、SNS事業者などへの投稿削除の要請や、削除を求める訴訟に向けた発信者情報の開示請求に関する方法を助言。実際に手続きを代行する法務省の人権相談窓口に取り次いできた。

2010年度に1千件超だったセンターへの相談件数は近年、毎年度5千件以上で推移している。こうしたなか、20年5月、テレビ番組への出演を巡りネットで中傷を受けたプロレスラーの木村花さんが自殺する問題が起き、対応の強化を求める声が強まった。

総務省関係者は「名誉毀損罪などに抵触する恐れのある書き込みや、緊迫度が高いと感じられるケースは、相談者の意向も踏まえながら警察につなぎ、問題解決を図りたい」という。

4月から相談窓口の人員を増やすとともに、今後、警察庁とも協議を進め、迅速な連絡体制づくりを検討する方針。

ネット中傷に対しては民間などの動きが既に活発だ。一般社団法人「セーファーインターネット協会」(東京)は20年6月末に「誹謗中傷ホットライン」を開設。相談者の心のケアに取り組むだけでなく、誹謗中傷に当たると判断した書き込みはプロバイダーなどを通じ削除を求める。

オンラインゲーム大手、グリーは小中高校を対象に、ネット投稿の注意点を指導する講演活動を続けている。講師を務める小木曽健・社会貢献チームマネージャーは「ネットの書き込み一つが誰かの人生を左右しかねない。その責任の重さを自覚してほしい」と子どもたちに訴える。

学習のポイントを▽誰もが加害者になりうる▽投稿内容を深刻に受け止めすぎない▽泣き寝入りせず適切な対抗措置を知る――などの点に置いているという。

木村花さんの母、響子さんも30日に記者会見し、ネット上の中傷などを減らすために活動するNPO法人の設立を準備していると発表した。

こうした動きは総務省も着目、投稿削除や事件化など緊急性を要する事案は他省庁と、被害者への心理的支援やリテラシー向上のための啓発などは民間機関との協力を強めていきたい考えだ。

表現の自由との兼ね合い 模索する各国


いかにネット上の誹謗中傷を防ぐか。多くの国が表現の自由との兼ね合いのなかで最善の方法を模索している。
国際大の山口真一准教授(ネットメディア論)によると、欧州では難民問題に絡むヘイト表現に対応するための法整備が検討されてきた。
ドイツでは2017年、SNS事業者に対し違法性のある書き込みの情報が寄せられてから24時間以内の削除義務と、従わない場合に最大5000万ユーロ(約64億円)の罰金を科す法律が成立。19年にはフェイスブックが200万ユーロの支払いを命じられた。
ただ、こうした法規制は、事業者の過剰な削除による表現の自由の抑圧を招きかねないとする声も根強い。フランスも20年に同様の法案が議会で可決されたが、憲法評議会が24時間以内の削除条項などを違憲と判断、修正して施行された。
米国は原則、事業者が書き込みに対する法的責任を負わないが、今年1月の連邦議会議事堂の占拠事件を契機に、事業者に投稿管理の強化を義務付ける案が浮上した。
日本では総務省が今国会にプロバイダー責任制限法の改正案を提出。削除を求める訴訟に向け、複数回の裁判手続きが必要だった発信者情報の開示請求が1回で終えられる案だが、投稿規制を巡る議論は深まっていない。
山口准教授は「法規制の是非は表現の自由も絡む難しい問題。批判と中傷の線引きは難しく、すぐには結論が導き出せない」と指摘。「まずは官民の連携で悪質な書き込みによる悲劇を生まない社会づくりを急ぐべきだ」と強調している。

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