那覇市の土地提供は「違憲」 最高裁大法廷、孔子廟訴訟

儒教の祖・孔子をまつる「孔子廟(びょう)」のために、那覇市が土地を無償で使わせていることが憲法の「政教分離原則」に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は24日、使用料免除は憲法20条3項が禁じる自治体の「宗教的活動」に当たるとして違憲との判断を示した。
政教分離を巡り最高裁が違憲判断を示したのは「愛媛玉串料訴訟」大法廷判決(1997年)、「空知太神社訴訟」大法廷判決(2010年)に続く3例目。
問題となったのは那覇市の「久米至聖廟(くめしせいびょう)」と呼ばれる孔子廟。約600年前以降に中国から渡来し、琉球王国を支えた「久米三十六姓」の子孫が関係する一般社団法人が2013年、市が管理する公園内に建てた。
一般社団法人の申請に基づき、市は歴史・文化を伝える「体験学習施設」に該当するとして月約48万円の土地の使用料を免除。原告の住民側が免除の違法確認を求める訴えを起こし、一、二審は違憲と判断していた。
大法廷は、空知太神社訴訟の判断枠組みに沿って「施設の性格、免除の経緯や態様、一般人の評価などを考慮し、社会通念に照らして総合的に判断する」との立場で憲法適合性を検討した。
本殿に当たる部分に孔子像があり、多くの人が家族繁栄などを祈る様子は「社寺との類似性がある」と指摘。供物を並べて孔子の霊を迎える年1回の祭礼は「宗教的意義がある儀式だ」とし「施設の宗教性を肯定でき、程度も軽微ではない」と述べた。
第2次世界大戦で焼失した前身施設とは違う場所に再建した経緯などから「観光資源としての意義、歴史的価値で無償提供の必要性、合理性は裏付けられない」とも言及した。儒教自体が宗教といえるかは判断を避けた。
市の裁量を理由に徴収すべき額を示さなかった二審の判断は採用せず、一審と同様に「使用料全額を請求しないことは違法だ」との判断も併せて示した。
裁判官15人中14人の多数意見。2月7日付で退官した林景一裁判官(行政官出身)は反対意見を表明し「参拝者の大半は観光客の可能性が高いなど、施設は宗教性がないか既に希薄化したと考えられる」と指摘。「宗教組織・団体の存在を認定できずに政教分離規定に違反するとの判断は、規定の外縁を曖昧な形で過度に広げている」とした。
那覇市の城間幹子市長は「判決文を読み込んだ上で、市として適切に対応したい」とコメントした。