流出の仮想通貨NEM、不正交換疑い31人摘発 188億円分
首謀者特定のハードル高く

暗号資産(仮想通貨)交換事業者「コインチェック」から2018年1月、約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した事件で、警視庁は22日までに、計約188億円分のNEMの不正な交換に応じたとして、計31人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑で摘発したと発表した。仮想通貨の不正送金を助長する行為に厳しい姿勢を示したが、首謀者特定のハードルは高い。
警視庁によると、同庁が逮捕・書類送検した31人は北海道や東京都など13都道府県に住む20~40代の日本人の男。最大で約67億円相当を交換していた。31人の交換額は総額で188億円相当となり、コインチェックから流出した額の3割にとどまる。残りは大半が海外に流出しており、交換者が特定できなかったケースが多いという。
逮捕や送検の容疑は18年2~3月、氏名不詳者がコインチェックから不正に得たNEMであると知りながら交換に応じた疑い。
逮捕した6人のうち2人は、警視庁が20年3月に逮捕した30~40代の医師や会社役員。当時のレートで計約30億円分を不正に交換したとして同4月に起訴された。
流出事件では、何者かが同社のシステムに不正アクセスしてNEMを外部に送金。匿名性の高い闇サイト群「ダークウェブ」上に交換サイトを開設し、約580億円相当を相場より15%安いレートでほかの仮想通貨との交換を持ちかけた。
一般的にダークウェブを使ったサイバー犯罪捜査は難航する場合が多い。警視庁はダークウェブ上のサイトで交換されたNEMをさらに追跡し、通常のインターネット上の交換所で取引された際に登録者の身元を特定するなどした。
一方、警視庁は流出に関与した首謀者らについても、電子計算機使用詐欺容疑などで捜査しているが、摘発には至っていない。19年に国連がまとめた報告書は、コインチェックの事件の攻撃グループについて北朝鮮のハッカー集団の関与を示唆した。サイバー犯罪では海外からのアクセスも容易で、国家を背景とした攻撃についても指摘されることが多い。技術が高く手口も巧妙なため、捜査の壁になっているとみられる。