半藤一利さんが死去 作家「日本のいちばん長い日」
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「日本のいちばん長い日」など多くの昭和史ノンフィクションを執筆した作家の半藤一利(はんどう・かずとし)さんが1月12日、老衰のため東京都世田谷区の自宅で死去した。90歳だった。
東京都生まれ。1953年に文芸春秋新社(当時)に入社。取材で出会った作家の坂口安吾、元海軍記者の伊藤正徳らの影響で戦史研究に携わり、多くの旧軍人に戦争の実相を聞いた。
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戦後20年となる65年に、終戦の玉音放送までの24時間を描いた「日本のいちばん長い日」を刊行。あらゆる方面の当事者にインタビューする手法で、それまで知られていなかった終戦の決定過程を明らかにした。
その後も編集者を務めながら昭和の戦史を執筆。文芸春秋社を退社後、「ノモンハンの夏」で山本七平賞、「昭和史」で毎日出版文化賞特別賞。平成の昭和懐古ブームの火付け役となった。「幕末史」「日露戦争史」など昭和史以外の作品への評価も高く、2015年に菊池寛賞を受賞している。妻の末利子さんが夏目漱石の孫ということもあり、漱石関連の著書も多数。
06年に日本経済新聞が富田朝彦・元宮内庁長官の日記・手帳(富田メモ)をもとに、昭和天皇がA級戦犯の靖国神社合祀に不快感を示していたと報じた際、識者として最初にメモを鑑定、評価した。日本経済新聞出版から「いま戦争と平和を語る」「『東京裁判』を読む」などを刊行している。