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コロナ禍の被災伝承、非接触で 「伝える側も変化を」

山口県の大学生らにオンラインで語りかける永沼悠斗さん(右)(2月、宮城県石巻市)=共同

東日本大震災の被災体験伝承の取り組みが新型コロナウイルス禍で危機に見舞われている。現地へ足を運んでもらいにくくなり、語り部活動への参加者は激減した。「10年を節目にしない」の決意の下、オンラインで実施する例も。専門家はこれまでの積み重ねを踏まえ「伝える側も変わるべきだ」と指摘する。

「自宅は流失、通学路はもうありません」。2月23日、児童・教職員計84人が津波の犠牲になった宮城県石巻市立大川小の前で、永沼悠斗さん(26)がカメラに向かい語り掛ける。遠く山口県で大学生らが耳を傾けた。

強風の中、震災前の大川小や町並みの写真を示し、亡くなった当時2年生の弟との思い出を口にした。「人ごとと思わず、自分の地域ではどうなるか考えて」と訴えた。

石巻市の「3・11みらいサポート」と日本赤十字社宮城県支部が実施した。永沼さんは「対面より相手の反応を確かめにくく、一方的な説明になりがち」と難点を挙げ、毎回反省点を振り返る。

みらいサポートの現地での語り部は2020年度、コロナ禍で19年度の約半数に。代わりのオンライン語り部には2月末までに1万1千人超が参加し、担当者は手応えを感じているという。

オンラインのメリットは、新型コロナの感染リスクが低く、相手の居場所を問わない点だ。遠方からも依頼が来る。

石巻市の日本カーシェアリング協会は、自動音声で震災遺構や再建した町を案内するカーナビを開発し、貸し出すサービスを始めた。以前から構想があったが図らずも感染対策となった。

遠方への旅行に代え、近隣の旅行客や学生が被災地を訪れる動きもある。東京電力福島第1原発事故を後世に伝える福島県双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」は、昨年9月の開館から今年2月末までに約3万7千人が訪れた。うち約6千人は団体の教育旅行で東北や北関東からが多い。

新型コロナの感染が拡大する地域からの訪問も拒まない。小林孝副館長は、原子力災害のように目に見えない恐怖があると指摘。「風評被害に苦しめられた福島として、同じことはしない」と述べた。

各地で相次ぐ自然災害で、東北の被災地だけが注目される状況ではなくなりつつある。東北大の佐藤翔輔准教授(災害伝承学)は、体験をありのままに語る場面が多かったこの10年の傾向から「伝える側も変わらなくてはいけない。大震災ならではの具体性を持ちつつ、他の災害に生かせる一般性も備えた教訓の発信が必要だ」と話す。〔共同〕

宮城県石巻市立大川小の前で語り部活動をする永沼悠斗さん(右)。「3・11みらいサポート」のスタッフ(左)が生中継し、山口県で大学生らが耳を傾けた(2月)=共同

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