/

軽井沢バス事故遺族、「息子との約束」安全誓う

「子どもたちの死を無駄にしない」。大学生ら41人が死傷した長野県軽井沢町のスキーバス転落事故は、15日で発生から5年を迎える。次男の寛さん(当時19)を亡くした大阪府吹田市の田原義則さん(55)は、通夜の弔辞で誓った「約束」を今も胸に刻む。遺族会代表として安全対策の徹底と風化防止に奔走してきた。

事故は2016年1月15日午前1時50分ごろ発生。大学生13人と運転手2人が死亡、26人が重軽傷を負った。下りカーブを時速約95キロで暴走し、ガードレールをなぎ倒して崖下に転落したバス。国土交通省が委託した有識者による事故調査では、直接的な原因は無謀な運転だったが、運転手への教育不足や、ずさんな運行管理など会社側の問題があり、急激な需要拡大による安全軽視も背景にあったと指摘された。

遺族会は、遺族同士がつながるため、事故の翌月に結成。その後「行政だけでは対策がおろそかになり、当事者である遺族が声を上げてフォローしないと、また事故は起こる」との思いが田原さんの中にあり、再発防止に向けても動き始めた。

2016年5月には、国交省の事故対策検討委員会に再発防止への申し入れ書を提出。委員会が行政と業界全体に向けて取りまとめた85項目の再発防止策には、運行管理や監査強化などについて遺族の要望も反映され、全項目が実施されてきた。

17年にバス運行会社の社長らが業務上過失致死傷容疑で書類送検された後には「再発防止のためには、裁判で原因をはっきりとさせたい」と、起訴を求め街頭で署名活動を実施。約4万7千筆を長野地検に提出した。

一方、免許更新時に適性検査を設けて不適合者を排除する制度は、警察庁との意見交換会で要望を続けてきたが、実現していない。今後も国交省と警察庁、遺族会の間で協議が続けられる予定で、田原さんは「適性結果を免許証に書いてもらうことでもいい。荒い運転手が応募してくればバス会社は採用をやめるだろうし、本人も次の免許更新時には頑張ると思う」と訴え続ける。

刑事処分や制度改善などまだ見通せないものも残っている。今月10日、京都府舞鶴市の寛さんが眠る墓を訪れた田原さんは、墓前で手を合わせ、通夜での「約束」を思い浮かべながら語り掛けた。「遺族会の活動として5年間やってきたことは間違ってはいなかった。でも、まだまだやるべきことはあるな」

バス業界、コロナで打撃

行政と業界団体は不適切なバス事業者の排除など対策を進めてきた。ただ新型コロナウイルス感染拡大の影響で業界は苦境にあえいでいる。

コロナ禍で修学旅行などの貸し切り運行、長距離高速バス、高齢者のツアーが軒並み打撃を受けた。国交省によると、昨年の貸し切りバス運送収入は前年比約37%減少、高速バスも昨年4月以降、収入が半分以上減った事業者は毎月7割を超えた。

高速バスマーケティング研究所(横浜市)の成定竜一所長によると、バス事業者の多くは助成金で従業員の給料を払い、最低限の状態を保っているだけの「冬眠状態」とも言える、厳しい状況に置かれているという。成定所長は「コロナ禍収束後に悪質業者が出てくる可能性も否定できず、業界全体で注視していかなければ」と話す。

遺族会代表の田原義則さん(55)は「経営状況が悪化する事業者はあると思うが、今後安全がおろそかにならないように、対策を含め国交省は目を光らせてほしい」と訴えている。

〔共同〕

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

業界:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン