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感染対策と運営 東京オリパラの裏方、難題に奔走

再び「五輪イヤー」が幕を開けた。延期された東京五輪・パラリンピックの今夏開催に向けた準備が本格化する。大会運営では、新型コロナウイルスの流行継続を前提に対策を練る必要がある。選手らの安全をどう確保していくのか。裏方役である各競技の運営責任者は重い課題を背負い、走り抜ける。

松尾さんは2019年ラグビーW杯の日本対スコットランド戦の熱狂が忘れられない

W杯の火絶やすな、「屈しない気持ち伝える」 7人制ラグビー担当・松尾さん

「観客の一人として鳥肌がたった」。大会組織委員会スポーツ局で五輪ラグビーのスポーツマネージャーを務める松尾エイミさん(39)には脳裏に焼き付いた試合がある。2019年10月13日のラグビーワールドカップ(W杯)、日本対スコットランド戦だ。

直前に襲来した台風19号の影響で開催が危ぶまれながら、大会関係者らの尽力で横浜での試合が実現。日本代表が初の8強進出を決め、観衆6万7千人が一体となり熱狂の渦に包まれた。松尾さんが五輪で目指すスタジアムの姿だった。

その時は五輪が1年延期になるとは夢にも思わなかった。「中止だったら心が折れたかもしれない。でも延期だから先がある」と前を向いてきた。

スポーツマネージャーは各競技の運営責任者だ。選手の食事や試合会場での過ごし方のケア、医療やドーピング対策など多くに関わる。ラグビーの国際統括団体とは2週に1回オンラインでミーティング。各国チームのほか、審判が使うインカムや試合球の業者など、やり取りする関係者は内外100人以上に及ぶ。

新型コロナで競技運営は修正を迫られている。例えば選手の動線。従来は、試合会場となる東京スタジアム(東京都調布市)近くの更衣室から、観客が通る動線を横切った上での会場入りを想定していた。警備員が観客の流れを止め、選手を通す予定だった。しかし万一の感染リスクも考慮し見直しを視野に入れる。スタンドにボールが入れば、消毒してピッチに戻すことも検討する。4月のテストイベントを見据え、細かな運営を詰めている。

ラグビーは接触プレーが多く、感染リスクも指摘される。だが欧州の6カ国対抗戦などコロナ下で開催された主な国際大会で「試合中の感染事例は出ていない」(松尾さん)。そうした大会のガイドラインも参考に本番への備えを進める。

五輪で行う7人制は、W杯の15人制と同じ100×70メートルのフィールドを使う。よりスピーディーな展開が魅力だ。松尾さんは高校2年間をニュージーランド、大学時代を米国で過ごしたが、ラグビーと縁はなかった。帰国の際、日本ラグビー協会が語学に堪能なスタッフを募集していると知って同協会へ。7人制の醍醐味も知った。W杯同様、苦難を乗り越えた五輪の場で「屈しない気持ちをいろんな人に感じ取ってほしい」と願う。

(村田篤史)

仕切り直しの夢舞台、思いに応える ボッチャ担当・斎藤さん

斎藤さんは25年ほど前にボッチャに出合い、競技大会運営などに携わってきた

8月24日のパラリンピック開幕に向け、国際競技連盟とオンラインでミーティングを重ねている。「どうやれば選手が安全に参加できるのか」。大会組織委員会スポーツ局のボッチャ担当のスポーツマネージャー、斎藤保将さん(52)は試行錯誤の日々だ。

赤と青の球を交互に6球ずつ投げ、白の目標球にどれだけ近づけるかを競うボッチャは「地上のカーリング」とも呼ばれる。脳性まひなどで四肢に重度の機能障害を抱える人たちのために欧州で考案された。

重い脳性まひなどで呼吸機能が低下していると、新型コロナウイルスに感染した際に重症化する恐れがあるとされる。感染防止対策には細心の注意を払う必要がある。

例えば車いすはどう扱うか。移動する中でタイヤには地上の様々なものが付く。それが選手の手や腕、服に付着する可能性がある。斎藤さんは「消毒はどのタイミングでするのか、タイヤまで行うのか。健常者向けの対策に上乗せして検討していかなければならない」と強調する。

斎藤さんは25年ほど前、特別支援学校の教員だったときに先輩教員から紹介され、初めてボッチャと出合った。「この競技なら障害が重くても工夫しながら楽しみ、世界に挑戦できる」。ひき付けられ、日本選手権など競技大会の運営に携わるなどしてきた。かつて「ほとんど知られていない」スポーツだったが、認知度は徐々に向上。2016年のリオデジャネイロ大会の視察では、盛り上がりぶりに衝撃を受けた。

格別な思いで迎えるはずだった20年の東京大会。しかし新型コロナ感染の広がりを受け、同年2月末~3月初めのテスト大会は選手不参加の形になった。選手役を置き、車いすの動線や競技エリアなど運営面をチェックするのにとどまった。そして3月下旬、大会の1年延期が決まる。

「この状況では仕方ない」と考えつつ、重度の障害のある選手もいるボッチャだけに、複雑な思いも抱いた。「『来年は生きていられるかは分からない、今なら出られた』と考える選手もいるだろう」

仕切り直しの大会で、コロナ対策と競技運営を両立させる――。その原動力はひしひしと感じる選手たちの夢舞台への熱い思いだ。「選手の念願に応えられる大会にしたい」と意気込む。

(鬼頭めぐみ)

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