その「宅飲み」大丈夫? 感染リスク、飲み過ぎにも注意

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急事態宣言が再発令され、飲食店での夜の宴会は自粛が強く求められている。代わりに自宅で酒を飲む「宅飲み」に改めて注目が集まるが、個人宅でも人数が集まれば感染拡大の恐れは高まる。飲み過ぎのリスクにも十分注意したい。
「画面越しの飲み会も楽しめるようになった」。東京都内のIT(情報技術)企業に勤める男性会社員(43)は、1月半ばに予定している新入社員の歓迎会に、ビデオ会議システムを通じて自宅から缶ビール片手に参加する。8日の緊急事態宣言で飲食店での開催はできないが、「互いを知る機会は仕事上でも大切」と話す。
勤務先は感染が拡大する状況下でも社員同士の交流を促進するため、毎月採用する新入社員の歓迎会をオンラインで開く際、1人に最大4千円の飲食代を補助する制度を設けた。2020年12月にはオンライン忘年会が社内で計10回開かれ、延べ80人以上が自宅から参加した。男性も20人規模のオンライン飲み会の幹事役をこなせるようになった。
コロナの影響で在宅時間が増えたことで、自宅で飲む頻度は高まっている。江崎グリコが月1回以上自宅で誰かと酒を飲む全国30~59歳の男女300人に行った20年11月の調査では、35%の人が同年4月の緊急事態宣言後に宅飲みの頻度が増加していた。忘新年会は5人に1人がオンラインで実施すると回答した。
ただ自宅に人を招くなど、家族以外と複数人で飲む場合には感染への注意が必要だ。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は5日の記者会見で、飲食店以外のクラスター(感染者集団)発生現場のひとつとして「自宅での飲み会、いわゆる宅飲み」と言及し、警鐘を鳴らした。

個人宅では一般に飲食店にあるような飛沫を防ぐアクリル板といった設備はなく、こまめな消毒の徹底も難しい。札幌市ではホームページなどで「換気の悪い部屋に長時間、大人数が集まる宅飲みは、感染リスクが高まる」と注意を促す。
飲み過ぎも懸念される。東京アルコール医療総合センター(東京・板橋)では、12月初めから飲酒に関する電話相談が増えた。垣渕洋一センター長は「自宅では時間の制約がなく、飲む量が増えがち。在宅勤務であれば二日酔いが同僚にばれないなど歯止めを掛けにくい」と話す。
相模原市の70代の文筆業男性はコロナを機に、中学校時代の同級生数人と定期的にオンライン飲み会を開くようになった。ところが自宅という気軽さに懐かしさも手伝ってか、つい飲み過ぎてしまうことが少なくないという。男性の妻は「気をつけないと危ないと言っているが……」と苦言を呈する。
酒と適切に付き合うにはどうすればよいか。趣味などに費やす時間を増やすほか、家族に「減酒」を宣言したり、日々のアルコール摂取量を記録して可視化したりすることも有効だという。垣渕センター長は「我慢してストレスをためるのではなく、日常生活で実践しやすい取り組みを心がけて」と呼びかける。
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