盲導犬利用者「援助求めにくい」 新常態に戸惑い

「接近するので援助を求めにくい」。目が不自由なため盲導犬と暮らす人から、新型コロナウイルス流行に伴う新しい生活様式に戸惑う声が上がっている。盲導犬の育成団体などはコロナ禍に必要な手助けを発信し、「感染対策を取った上で、これまで通りサポートしてほしい」と訴える。
日本盲導犬協会などにはコロナの感染拡大後、「周囲からの声掛けが減った」「店で足元の印が分からず間隔を空けて並ぶことが難しい」などの声が、盲導犬利用者から寄せられた。
飲食店や宿泊施設などは、盲導犬の同伴を原則として拒んではならないが、従来は盲導犬と入店できた店から「犬は外に待たせて」と告げられた例もある。盲導犬総合支援センターの担当者は「触れたり声を掛けたりするのはかえって迷惑と考え、援助をためらう人もいるのでは」と推測する。
センターは11月、SNSでコロナ禍に対応した声掛け例の発信を始めた。腕を貸す代わりに少し前を歩いて声で誘導する方法や、距離を取ったまま列に並べるよう、前の人が進み具合を言葉で知らせる方法などを、イラストを交え公開している。
日本盲導犬協会も11月、店での視覚障害者の接遇方法などを学ぶオンライン講座を開始。手指用消毒液の場所を口頭で伝えることが安心につながる点や、「犬から人への感染例は報告されていない」として、盲導犬自身に消毒の必要がないことなどを紹介する。
接触を避け、トレー上で釣り銭をやりとりする店も増えた。協会職員で盲導犬ユーザーの押野まゆさん(34)は講座で、「トレーを傾け小銭を拾いやすくしてもらえると助かる」と話した。
盲導犬を目指す子犬の確保も課題だ。同協会は感染防止を徹底し、訓練開始までの約10カ月間、子犬を預かって世話するボランティア向けのしつけ教室を分散して行ったり、動画での指導に切り替えたりした。その分、職員の負担も増加し、一時は繁殖の頻度を月数回から1回に減らして対応したという。
日本盲人社会福祉施設協議会によると、全国で909頭の盲導犬が活動するが、ここ10年は減少傾向が続く。年間35頭前後の盲導犬を輩出する同協会は、「例年通りの育成頭数を維持するよう工夫している。コロナ禍でも利用者が取り残されず、通常通り社会に出られるようにしたい」と気を引き締めている。〔時事〕