五輪選手村マンションの入居遅れ 補償求め調停申し立て

東京五輪・パラリンピックの選手村として使用後、分譲されるマンションの引き渡しが大会延期で遅れたことを巡り、一部購入者が売り主側に補償を求める調停を申し立てている。売り主側は新型コロナウイルスによる影響を予測できなかったと主張するが、購入者側は「追加負担が生じる」などと訴えている。
購入者24人が今月1日、東京地裁に調停を申し立てた。
三方を海に囲まれた東京・晴海の人工島南側に、20棟余りのマンション群が立ち並ぶ選手村。今後、小中学校や商業施設も新設され、約1万2千人が暮らす街「晴海フラッグ」となる見通しだ。
分譲予定の4145戸のうち既に940戸が販売されている。三井不動産など売り主の企業グループは延期を踏まえ、2023年春の引き渡し時期を1年ほど遅らせると決定。購入者には昨年6月、契約解除を希望する場合は手付金の返済に応じると通知した。
「売り主に説明会を開くよう求めても、一切応じない」。不満を口にしたのは購入者の40代の女性会社員。東京都は昨年11月、延期に伴う選手村の賃料として売り主側に41億8千万円を支払う契約を結んでおり、女性は「なぜ私たちには何の補償もないのか」と憤る。現在居住するマンションの家賃が余分にかかり、住宅ローンの開始時期が遅れ月々の支払額が増えることが心配だという。
購入者側代理人の轟木博信弁護士によると、売買契約は「売り主側の故意・過失ではない事由、または予見できない事由により引き渡しが遅れる場合は承諾しなければならない」と規定している。轟木弁護士は「入居遅れによって発生する損害の補償を免責する条項はない」と強調。三井不動産の担当者は「申し立ての内容を確認し、適切に対応する」としている。
一方、慶応大法科大学院の平野裕之教授(民法)は「五輪延期は不可抗力で売り主に責任はないが、工事を可能な限り急いで行う努力義務がある」と指摘する。その上で「売り主側は都から賃料補償を受けているのに、買い主側に何ら補償がないのは明らかに不公平であり、双方が話し合いを尽くすべきだ」と話した。〔共同〕
