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女子もスラックス可 制服選べる公立高、600校超に

女子生徒の制服にスラックスを追加したり、性別の縛りをなくしたりする形で制服に選択肢を設ける都道府県立高が少なくとも19都道県の600校超に上ることが、都道府県教育委員会への取材で分かった。性的少数者のうち出生時の性別と自認する性別が異なる「トランスジェンダー」の生徒への配慮に加え防寒面などから導入する高校も増えている。

残る28府県については、そうした高校は存在するが校数が分からないとした教委と、有無自体が不明とする教委に分かれた。後者の自治体について、共同通信が個別に高校に問い合わせた結果、選択肢を設ける都道府県立高は来春には全国に拡大する見通しだ。

選択肢の中身は、女子生徒にスラックスを認める場合が多い。制服を男子用、女子用と限定せずに選べるようにして、男子がスカートをはける高校もある。選択肢がない高校でも、申し出があれば個別に対応しているケースはある。

取材は10月から11月にかけて実施。教委が、制服に選択肢を設ける高校があるとし、実数も把握していたのは19都道県で、合計639校に上った。最も多いのは北海道の97校で、東京の93校、千葉の73校が続いた。原則全日制のみを集計したが、北海道、埼玉、東京は定時制が含まれる。集計時期は教委ごとに異なり、高校数はその後に変動している可能性がある。

学校基本調査によると、都道府県立のほか市立なども含めた全国の公立高は、全日制と定時制合わせて約3500校。

残る28府県でも、京都府教委が「大半の学校で女子がスラックスを選べる」、和歌山県教委が「全体の約半数」とするなど、選択肢を設ける高校が広がっている。

実数を把握している栃木、岐阜、愛知の3県教委は、県議会で選択制を推奨する趣旨の答弁をして、各校に伝えた。

文部科学省は2015年、性的少数者の児童生徒への配慮を求める通知を出し、各教委によると、選択肢を設ける高校の増加につながった。「配慮だけを強調すると、かえって生徒が選びづらい」として、防寒や動きやすさといった利点を前面に打ち出す高校もある。〔共同〕

変わる「当たり前」

男子はスラックス、女子はスカート。そんな学校現場の「当たり前」が、望まぬ制服の着用に悩むトランスジェンダーの生徒の存在が知られてきたことによって、着実に変化を生み出している。

「制服で傷つく子を増やさないで」。8月、東京都江戸川区の高校生が、斉藤猛区長に訴えた。女性として生まれ、男性を自認する。中学生の頃にスカートの着用に苦しんだ経験から、私服で通える高校を選んだ。

中学時代を「心を押し殺し、大人になる前に死のうと思っていた」と振り返り、全ての区立中で性別に関係なく制服を選べるようにしてほしいと求めた。応じた斉藤区長も、見直しを検討する考えを示した。

共に要望した団体「LGBTコミュニティ江戸川」代表の七崎良輔さん(33)は「選択肢を増やすことで救われる子どもがいる」と期待する。一方、学校関係者からは「男子として生まれた生徒がスカートをはいていたら、いじめられるのでは」との懸念も聞いた。「いじめを理由に、選択肢を狭めてはいけない。大人側の理解がまだまだ足りない」と話す。

制服を選択できる九州のある公立高の教員は「性的少数者への配慮という点のみをアピールすると、当事者は着づらくなるだろう。機能面も含め、理由を問わず気軽に選べることが大事だ」と指摘する。

「スラックスだと足が冷えず、自転車をこぐ時にめくれるのを気にしなくてもいい。スカートには戻れない」。防寒や機能性を理由に制服を選んだのは、静岡県立藤枝西高2年の松本真琴さん(17)だ。

藤枝西高では2019年度から女子用のスラックス、本年度から男子用の7分丈パンツを相次いで導入した。7分丈パンツを購入した1年の常木大幹さん(16)も「夏は涼しいし動きやすかった」と高く評価する。

生徒指導主事の鬼束浩子教諭によると、制服の選択を本格的に検討したのは18年から。女子のスラックスはすぐに賛同が得られたものの、男子の7分丈の導入には苦労があった。

以前から夏に暑さでズボンの裾をめくり上げる男子が後を絶たず、「温暖化も踏まえた涼しい制服に」と提案したが、別の教員からは「見た目が良くない」と慎重な意見が相次いだ。業者に試作品を作ってもらい、実際に見た目や着心地を確認してもらうなどして、理解を広めた。

追加で費用がかかることもあり、購入したのは男女数人ずつだが、今後は学校の魅力の一つとして発信することも検討する。鬼束教諭は「制服をきちんと着てもらうために、本人の希望に合う選択肢を用意することが大切だ」と話している。〔共同〕

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