知っておきたいコロナワクチン副作用 腕の痛みや発熱
新型コロナウイルスのワクチン接種が加速している。米製薬大手ファイザー製ワクチンに続き、米モデルナ製、英アストラゼネカ製が5月21日に承認された。モデルナ製は東京、大阪に国が設置する高齢者向けの大規模接種会場のほか、6月21日から本格的に始まった職場接種でも使われている。1日当たりの接種回数(7日移動平均)は80万回を超えており、国が目標とする1日100万回接種も達成間近だ。一方でワクチンの副作用を不安視する声もある。現状と注意点をまとめた。
腕の痛みや倦怠感、発熱に注意
厚労省によると、6月13日までにファイザー製を接種した約2300万回のうち、軽微なものも含めて約1万3000件の副作用報告があった。このうち死亡は277人。死因は心不全や脳卒中などが多く、大半について専門家は「ワクチンと症状との因果関係を評価できない」としつつも「接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」と判断している。
国際的な基準に基づき急激なアレルギー症状であるアナフィラキシーと判断されたケースは238件あった。ほとんどが回復している。同省の専門部会は「現時点で安全性に重大な懸念はない」と評価している。



起きる恐れが最も高い副作用は注射した部位の痛みで、6~9割の人にみられた。ただ米ニューヨーク州立大学などの研究によると、日常生活に支障をきたすほどの痛みは1%未満にとどまる。ほかには赤みや腫れ、倦怠(けんたい)感や発熱、頭痛なども起こる。
アナフィラキシーでは、じんましんやかゆみ、息切れ、血圧の低下や意識消失などに突然襲われる。早めにエピネフリン(アドレナリン)や酸素を投与すれば深刻な事態になりにくい。副作用(後遺症)が起きた場合、他のワクチンと同様、医学的に因果関係があると国の審査会で認められれば、補償が受けられる。
インフルエンザワクチンは「不活化」というタイプで、ウイルスの表面たんぱく質が入っている。ファイザーやモデルナ製の新型コロナワクチンは遺伝情報物質の「mRNA」を投与する。体内でmRNAからウイルスの表面たんぱく質が作られる。mRNAワクチンは不活化ワクチンと比べて免疫を起こす力が強い。
特効薬、現時点で存在せず
接種の仕方も違う。インフルエンザは皮下組織に入れる。新型コロナはより深い筋肉まで注射する。皮下注射は成分がゆっくり吸収され、効果が長持ちする。筋肉注射は皮下注射に比べて副作用が少なく、抗体ができやすいとされる。海外では筋肉注射でワクチンを投与するのが一般的だ。ファイザーやモデルナのワクチンも筋肉注射で効果を確認している。日本の承認審査では海外のデータも参考にするため、筋肉注射しなければならない。皮下注射では効果や副作用が筋肉注射と異なる可能性がある。
日本政府は国民全員分のワクチンを確保するため3社と契約している。米ファイザーと米モデルナはmRNA、英アストラゼネカはウイルスベクターと呼ばれるワクチンで、有効性や保管に必要な温度などが異なる。21~28日の間隔で2回必要になる。



様々な治療薬の開発が続いているが、新型コロナウイルスの感染者の症状を劇的に改善するような「特効薬」は現時点では存在しない。予防にはワクチンの接種が不可欠だ。ワクチンはウイルスの一部から作られ、感染する前に接種すれば体を守る抗体などができる。抗体があれば感染しても発症しにくくなる。重症化したり亡くなったりする人も減らせる。人口の大半が接種して免疫を獲得すればウイルスの流行が収まる「集団免疫」の実現も視野に入る。ロックダウンのような大規模な経済活動の制限をしなくてすむと期待される。
政府は昨年12月に公布した改正予防接種法に基づき、「臨時接種」という位置づけで新型コロナのワクチン接種を進める。費用は原則、公費負担で、無料で受けられる。
ファイザー製のワクチンを使い、2月17日から医療従事者約4万人を対象に先行接種が始まった。3月から医療従事者約480万人、4月12日以降に65歳以上の高齢者3600万人と順次広げた。1人2回ずつ、7月末に希望する高齢者向け接種を終えることを目指し、接種ペースは急加速している。職場接種など64歳以下への接種も始まっている。
基礎疾患(持病)がある人も優先接種の対象になる。新型コロナに感染した場合、重症化しやすい病気を中心に国がリストを公表している。体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が30以上の肥満の人も重症化リスクが高いとして優先接種の対象となった。
基礎疾患の有無などを証明する書類は不要で、接種会場で医師に説明するだけでよい。ほかに重い精神疾患や知的障害がある人も優先接種の対象に追加した。死亡や入院のリスクが高いことが判明したためで、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を持つ人などを想定している。
高齢者や一般への接種には、市町村が発行する「接種券」が必要になる。住民票のある自治体での接種が原則だ。単身赴任などのやむを得ない事情があれば、他の自治体で受けることも認められる。国が東京と大阪に大規模接種会場を開くほか、都道府県などが独自の大規模接種会場を設ける動きも広がっている。
接種券の発行が遅れている自治体もある。企業などが従業員や家族などを対象に行う職場接種の場合、その時点で接種券が発行されていなくても接種が可能だ。
ワクチン休暇の企業も

職場接種では、本人や家族に副作用が出た場合、特別休暇を与えたり、看護のために休めたりするような支援策を取り入れる企業もある。
ファイザー製のワクチンは、マイナス70度前後での厳格な管理が必要になる。同社製のmRNAワクチンは熱に弱く壊れやすいからだ。解凍後は5日以内に接種する必要がある。ワクチンを保管できる「超低温冷凍庫」(ディープフリーザー)が配備された大規模病院や公的施設での集団接種が検討されているが、東京都練馬区のように配送体制を整えて、身近なかかりつけ医で接種できるようにする自治体もある。
接種会場では当日の体調や基礎疾患の有無などを「予診票」に記入する。医師は予診表や問診などで接種が可能か判断する。厚労省が作成した自治体向けのワクチン接種の手引などは「接種不適当者」として37.5度以上の発熱のある人や、重い急性疾患の人などを例示している。これらに該当すると接種は受けられない。
インフルエンザワクチンは「不活化」というタイプで、ウイルスの表面たんぱく質が入っている。ファイザーやモデルナ製の新型コロナワクチンは遺伝情報物質の「mRNA」を投与する。体内でmRNAからウイルスの表面たんぱく質が作られる。mRNAワクチンは不活化ワクチンと比べて免疫を起こす力が強い。

