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新卒からジョブ型、生産性向上へ経団連案 春季労使交渉

2021年の春季労使交渉が26日、事実上始まった。新型コロナウイルス禍で業績の格差が拡大していることから経団連は賃上げの統一方針を示さず、脱・横並びで各社が個別に判断する流れが強まる。コロナ後の成長に向けては働き方の変革も求められており、ジョブ型雇用の推進など日本経済の生産性を高める改革が大きな課題になる。

経団連は同日、連合や産業別労働組合を招いた労使フォーラムをオンラインで開いた。中西宏明会長は病気療養で欠席した。久保田政一事務総長が代読したコメントでは「従来の画一的な日本型雇用慣行の限界が顕在化している」と訴えた。

経団連の中西宏明会長は欠席し、久保田事務総長がコメントを代読した

年功序列でなく職責や成果で評価する仕組みや、専門性を生かして働くジョブ型雇用を広めるよう労使で協議する構えだ。既に大手企業を中心に、主に管理職や中途採用でジョブ型は広がりつつある。例えば、富士通は20年4月から幹部社員約1万5千人を対象にジョブ型雇用を導入した。

今回の春季交渉で経団連はさらに踏み込み、ジョブ型を新卒から取り入れるよう呼びかける。中西会長の出身母体の日立製作所は21年度からデジタル人材採用コースを設けて給与も個別に設定する。NECも21年度から、データサイエンスなど高度な領域でジョブ型の新卒採用を始める。年齢を問わず職能に報いる体系にする。

ジョブ型雇用が定着すれば働き手もスキル向上が必要になる。専門人材の獲得競争で賃金が上がり生産性が上がる好循環につながる期待がある。日本総合研究所の山田久副理事長は「日本の給与水準が国際的に低いのは労働市場の流動性が低いことも一因」とみる。

ジョブ型雇用は適切な評価体系を整える必要がある。経団連は働いた時間ではなく職務や成果で評価する裁量労働制の拡大を政府に要望する。

連合も人工知能(AI)関連など「高度専門人材のジョブ型採用はあり得る」と認めつつ、多様な職種に広げることには慎重な議論を求める。「付加価値の発揮をどう検証するのか」など適切な成果評価を課題に挙げる。裁量労働制の拡大についても、長時間労働やサービス残業につながるなどと懸念する。

連合の神津会長は、経済回復のために賃上げの流れ継続が重要と主張した

一方で連合は「雇用維持と賃上げ」の両立を求める。2%程度の賃上げを掲げており、神津里季生会長は「国内総生産(GDP)の7割は個人消費なので、コロナ下でも賃上げの流れを維持することが重要」と主張した。現実には業界横並びの春季交渉の慣行自体が古びつつあり、今回は政府が賃上げを呼びかける近年の「官製春闘」とも違う流れになっている。

既に基幹産業の自動車では業績の厳しさなどから要求でベースアップ(ベア)を見送る動きが相次ぐ。ホンダの労働組合である本田技研労働組合はベアに相当する賃金改善分の要求を8年ぶりに見送る方針を固めた。マツダ労働組合や三菱自動車工業労働組合も同じく8年ぶりに賃金改善分の要求を見送る方針だ。

電機メーカーの労働組合で構成する電機連合は、月2千円以上のベア要求案を固めた。上部団体である金属労協が掲げる月3千円以上より低い水準だ。従来は金属労協と足並みをそろえてきたが、異例の対応となる。脱・横並びを象徴する。

流通や外食などの労働組合が加盟するUAゼンセンは、賃上げ要求で「2%までの幅」を設ける方針だ。松浦昭彦会長は「あまりにも置かれた状況に幅があり、同じ状況で戦うのが難しい」と語った。業績堅調な場合は2%の賃上げを求める。「賃上げの流れを止めるわけにいかずデフレ回避も必要」と強調した。

日本の平均賃金は主要7カ国(G7)で最低水準という現実もある。デジタル人材の給与は中国や香港の方が高い場合もある。雇用改革も含め、人材獲得競争で日本企業は巻き返しが試される。

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