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長引くマイナス金利、綻ぶ「芸術作品」

「金利誘導が近い将来うまくいかなくなるのではないか」。最近、市場関係者が懸念の入り交じった視線を向けている指標がある。無担保コール翌日物金利だ。

金融機関が短期の資金を貸し借りする際の代表的な金利で、ここのところ上昇基調にある。直近の1月の平均金利はマイナス0.01%台半ばと約1年ぶりの高水準となった。マイナス金利政策を導入した2016年以来、約5年ぶりの高さも視野に入る。

背景を読み解くうえで、日銀がマイナス金利政策とセットで導入した日銀当座預金の「3層構造」をおさらいする必要がある。金融機関が日銀に預ける残高に適用する金利を3つに分け、マイナス金利の導入以前の残高の一部はプラス0.1%、法定準備額などはゼロ%、それ以外はマイナス0.1%とする仕組みだ。銀行が余剰資金を当座預金に積むのではなく投融資に回すよう促し、経済の活性化につなげる狙いがあった。

その後、日銀は20年3月に新型コロナウイルス対応の特別オペ(公開市場操作)を導入した。金融機関がこの制度を使うとゼロ金利の適用枠が増える。マイナス金利で短期市場から資金を調達しゼロ金利で預けると、利ざやが稼げてしまう。この結果、短期の資金調達が活発になり、無担保コール翌日物金利が上がる構図が生まれた。

「金利がマイナス圏で推移している分には問題ない」というのが日銀内の一般的な見方だが、政策委員からは「緩和姿勢の後退といった誤ったメッセージと市場に受け取られないよう留意する必要がある」との意見も出ている。

3月からは地域金融機関の再編や経営改善を支援する制度も始まる。改革を促すため、一定の条件を満たした地銀などの当座預金に金利を0.1%上乗せする「あめ玉」も用意した。短期市場で有力なプレーヤーである地銀の資金需要が高まり、無担保コール翌日物金利がプラス圏に浮上する可能性もある。

日銀が金利上昇を抑えるにはオペで資金供給を増やすのが常道だが、「疲弊している市場機能が一段とゆがむ恐れもあり、実際は難しい」(短資会社)。日銀内外で3層構造の見直し論も取り沙汰され始めている。

「3層構造は考え抜かれた芸術作品」。マイナス金利の導入当時、こう評する市場関係者もいた。市場のゼロ金利制約を乗り越えつつ、金融機関に過度な負担がかからないよう配慮した制度設計だったからだ。導入から5年以上たち、複雑さを増したマイナス金利政策は、「芸術作品」に綻びを広げつつある。

(古賀雄大)

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