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脱炭素、黒田総裁は「本音」を明かせるか

「来年にかけて、より真剣に考えていくべきテーマであることは分かるんですけどね」。年の瀬が迫るなか、日銀内で戸惑いの声が上がる。国内外で議論が急速に盛り上がる気候変動への対応についてだ。

日銀の使命は物価と金融システムの安定にあり、金融政策には中立性が求められる。中央銀行として環境分野に絞った支援は適切か。そもそも気候変動は物価にどんな影響を与えるか。明確な答えはなく、これまで日銀は半身の姿勢で情報収集・分析に活動をとどめてきた。

2021年は大きな転機を迎える。環境問題に距離を置いてきた米国では、1月に就任するバイデン次期大統領が温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定に復帰する考えを示す。環境分野への巨額投資も掲げる。

15日、米連邦準備理事会(FRB)はNGFSへの参加を表明した。選挙人による投票でバイデン氏の勝利が正式に確定した日の翌日だ。NGFSは「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク」の略称で、世界の中央銀行や監督当局が集う。日銀も1年前に参加した。FRBの加入で温暖化対応を巡る議論がさらに加速する可能性が高い。

欧州中央銀行(ECB)が21年に結果を公表する金融政策の戦略的な見直しでも「気候変動が議題の一つになる」(ラガルド総裁)。元日銀理事でみずほ総合研究所の門間一夫氏は「気候変動リスクへの中銀の関与はすでにグローバルな流れだ」と指摘する。

日本も菅義偉政権が50年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、自動車や鉄鋼など多くの企業が脱炭素に向けて走り出した。こうした環境の変化に日銀も無関心ではいられない。

日銀は10月公表の金融システムリポートで気候変動の項目を設けた。21年度の考査方針でも気候変動をテーマの一つに掲げ、金融機関の経営陣との対話を深める考えのようだ。まずは金融システム安定の観点からこの問題への関与を深める。

その次のステップとして、環境関連の債券や上場投資信託(ETF)の購入など金融政策でもグリーン成長を促す方策をとるかが焦点になる。

「もはや気候変動への対応を一時的であれ遅らせることはできない」。リーマン・ショック直後の09年、英紙ガーディアンにこんな記事が載った。当時、アジア開発銀行総裁だった黒田氏が温暖化問題に詳しい経済学者のスターン氏と連名で寄稿した。

「実は気候変動に対する総裁の関心はとても高いはず」。日銀内ではこんな声も聞く。黒田日銀が脱炭素にどう対応するのか。うちに秘めた「本音」を表に出すことなく時間が過ぎるのか。新年の新たな注目点となる。

(南毅郎)

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