英ポンド、対ドルで一段と上昇 追加緩和観測が後退

外国為替市場で英国の通貨ポンドが一段と上昇している。21日の海外市場では対ドルで1ポンド=1.37ドル台と、2年8カ月ぶりの高値を付けた。英国と欧州連合(EU)の間で自由貿易協定(FTA)が結ばれ、英経済を巡る不透明感が和らいだ。中央銀行の追加緩和観測が後退し、ポンドには買いが続いている。

英国とEUは2020年12月にFTAなど将来関係をめぐる交渉で合意し、21年以降も英国とEUの間では関税ゼロの貿易が続くことが決まった。合意に向けた期待感からポンドは20年後半から買われていたが、年が明けてFTAが暫定発効してからも対ドルのポンド相場は堅調な推移が続く。
背景にあるのは英イングランド銀行(中央銀行)による追加金融緩和観測の後退だ。英中銀のベイリー総裁は12日、マイナス金利について「問題点が多い」と発言した。野村証券の春井真也氏は「市場は英中銀が利下げに消極的だと受け止め、ポンドを買う動きが強まった」と指摘する。
世界的な投資家のリスク選好姿勢の強まりもポンド相場を支える。米国では20日、財政出動に積極的な民主党のバイデン氏が大統領に就任し、大規模な経済対策で米景気への回復期待が高まっている。「投資家心理の改善から、安全通貨のドルを売ってポンドを買う動きが広がっている」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏)という。
英国のEU離脱をめぐる不透明感からここ数年ポンド相場は軟調な推移が続いていた。通貨の総合的な価値を示す「日経通貨インデックス」(15年=100)によると、ポンドは足元で86程度にとどまる。野村の春井氏は「他通貨と比べてポンドの割安感は強く、年内には対ドルで1.45ドル程度まで上昇余地がありそうだ」とみている。