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苦境の地銀に多角化促す 金融審、銀行規制を緩和へ

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銀行による新事業への進出を阻んできた規制が緩和される。金融庁の金融審議会は16日、銀行法などで定める銀行ビジネスの範囲の拡大を盛り込んだ報告書案をまとめた。特に地方銀行の資源を活用し、地方企業の再生につなげることを目指す。ただし経営が厳しい一部の地銀にとって新規事業などのハードルは高く、効果が出るかは不透明さが残る。

金融審議会の「銀行制度等ワーキング・グループ」が銀行規制緩和策を盛り込んだ報告書案を了承した。金融庁は2021年の通常国会に銀行法など関連法改正案を提出する方針。早ければ同年秋ごろに新制度が動き出す。

今回の規制緩和策はデジタル分野や地方創生につながる業務を幅広く可能にするのが特徴。中核は銀行の業務範囲の拡大だ。預金を受け入れる銀行は健全性を保つため業務を厳しく制限されてきたが、デジタル化など時代の変化を踏まえ見直す。銀行子会社が営める「高度化等業務」としてシステム販売、データ分析・広告、人材派遣など8分野を挙げた。

金融庁の認可を得れば、銀行本体の子会社がシステムやアプリなどを開発して取引先企業に販売したり、多様な人材を派遣して経営を支援したりできるようになる。銀行グループ傘下にこうした会社を設立する場合は認可を不要とし、届け出だけで済むようにする。現在は議決権ベースで5%までに制限されている銀行による事業会社への出資規制も柔軟にする。

今回の規制緩和は規模にかかわらず銀行や信用金庫、信用組合など金融機関全般が対象だ。ただし、今年は新型コロナウイルス禍による地域経済への打撃や地銀の経営改革が焦点になったことから、地銀の事業モデルの再構築を意識した内容となった。

それでも、すべての地銀が規制緩和を生かせるかは未知数だ。メガバンクグループのようにシステム開発部門を自前で持っていたり、広域展開したりしている大手地銀はシステム販売や人材派遣で稼ぐ余地が広がり、歓迎の声が出ている。それに比べ、規模が小さい地銀はそれだけの経営資源を持っていないところが多い。

今回の規制緩和で観光や地域産品の販売などを手掛ける「地域活性化事業」への出資上限は50%から100%に引き上げられたが、慣れない分野で収益をあげるのは難しい。審議会では上智大法科大学院の森下哲朗教授が「金融機関が売りたいモノを売るのではなく、顧客に必要とされるものを提供する姿勢が大事だ」とクギを刺した。

報告書案には合併や経営統合する地銀に対し補助金を出す制度も盛り込んだ。金融庁幹部は「再編などで経営基盤を強化しないと次に進めない地銀もある」と話す。地銀改革に向けたメニューはおおむね出そろった。規制改革を活用して収益改善への道筋をつけられなければ、いよいよ地銀の再編が本格化する可能性がある。

巨大IT企業規制は積み残し

金融審議会では米アマゾン・ドット・コムなど海外の巨大IT(情報技術)企業が銀行業に参入した場合の規制についての結論は持ち越した。議論はされてきたものの、新型コロナウイルス禍を背景に地方銀行や中小企業の再生を急ぐ必要があったことも影響した。フィンテック企業の参入で金融業の垣根が崩れる中、規制の整備などを急ぐ必要がある。

16日の会合では、いわゆるプラットフォーマーについて「金融分野の市場シェアは急速に高まる可能性がある」(JPモルガン証券の西原里江氏)などの指摘が出た。仮にGAFAが日本の銀行業に参入し圧倒的な地位を築けば優越的地位の乱用などが懸念される。融資先企業に自社の商品購入を強要するといったケースが念頭にある。

報告書案は巨大IT企業が取引先に不利益を及ぼすリスクを指摘し、将来は競争条件を公平にするため銀行と同様に事業会社に対しても厳格な自己資本規制を課すことを検討すべきだとした。ただIT企業規制は金融以外の分野も関係することから、政府一体での議論が求められる。

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