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「伝家の宝刀」は機械を切れるか

「為替をはじめ金融市場急変のリスクには注意が必要だ」。日銀が2020年12月に開いた金融政策決定会合で円高が議論になった。21年に入ると外国為替市場で一時1ドル=102円台半ばまでドルに対して円高が進み、警戒感はさらに高まった。米国の長期金利上昇に伴い、いったん1ドル=104円台まで戻したもののドル安懸念は強い。

円相場の節目と意識されるのは1ドル=100円。近づくたびに大量の円売り・ドル買いで円高を阻む為替介入が取り沙汰される。仮に財務省・日銀が介入に踏み込む場合、向き合うのは過去と大きく様変わりした市場だ。

為替取引は現在、機械が主役だ。金融機関が取引に使う電子ブローキングシステム(EBS)では直物(スポット)取引の7~8割をアルゴリズムが占めるとされる。あらかじめ設定したプログラムに基づき投資判断し、自動で売買する。機械の台頭で外資系を中心に為替ディーラーは減り、10年前の1割程度になった金融機関もある。

最後に為替介入があったのは東日本大震災が起きた11年。当時の介入はEBSが使われ、民間側でいち早く気づくのは金融機関のディーラーたちだった。

ディーラーがEBSで円買い・ドル売り注文を出すと、取引の成約相手に日銀を示す「BOJ」のコードがパソコンのモニターに表れる。為替介入を大声で伝え、トレーディングフロアが騒然とする。介入に追随するように円売り・ドル買い一色になり、円安に大きく振れる。こんな風景が繰り広げられていた。

過去に介入を経験した元ディーラーは「動揺して相場の先行きを読み誤ることがあった」と明かし「機械は動揺はせず、人間よりはるかに正確に注文をさばいていく。回数を重ねて学習したら介入に追随する取引も減るかもしれない」と続ける。

日本が為替介入という「伝家の宝刀」を抜くことに、米国はじめ各国の理解を得られるかどうかは分からない。たとえ抜くことができたとしても、その太刀筋すら見切られるリスクがありそうだ。

(奥田宏二)

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