/

「法王超え」見据える黒田総裁 そのレガシーは

「1本のオペ(公開市場操作)が政策変更を示唆したり、先取りしたりすることはない」。日銀関係者が口にする常とう句の一つだ。それでも年明け早々の4日のオペは、市場に思惑を広げるものとなった。

新型コロナウイルスの感染再拡大で菅義偉首相が緊急事態宣言の再発令を検討すると伝わったこの日、株安進行を踏まえ日銀は上場投資信託(ETF)の購入に動いた。サプライズは購入額を500億円強と従来の700億円強から引き下げ、2016年8月以来の低水準に抑えたことだった。

16年夏は英国の欧州連合(EU)離脱問題が招いた市場の混乱を受け、日銀がETF購入枠を年6兆円とほぼ倍増した時期にあたる。その後のコロナ対応で上限は年12兆円まで引き上げた。今回のオペは、拡大一辺倒だったETF購入枠の「減額修正に向けた布石」と市場で受け止められている。

黒田東彦総裁が異次元緩和を始めてからこの春で丸8年たつ。その本質は大胆な市場介入にあった。

日銀の国債保有比率は13%から45%まで上がり、国の財政運営を左右する長期金利もコントロールするようになった。日銀のETF買いは株価下落の歯止め役となっている。為替相場をみても、日銀が総資産を米欧の中銀に見劣りしない規模に膨らませたことが1㌦=70~80円台の超円高の是正に一役買った。

同時に、日銀の「市場支配」の負の側面も目立つようになった。長期や超長期の国債利回りまで低位にとどめることは金融機関の収益機会を奪い、株高局面でも続くETF購入は市場をゆがめるとの批判が強まる。

日銀は3月にかけて現在の政策を点検し、必要な修正を加える方針を示した。「長期国債やETFなどの資産買い入れは市場機能に影響する。こうしたコストや副作用はできるだけ抑える必要がある」。黒田総裁の20年末の講演での発言からは、市場機能の修復という問題意識が浮かぶ。

10月を迎えるころ、黒田総裁の在任期間は一万田尚登氏(1946年6月~54年12月)を抜き、歴代総裁で最長になる。一万田氏は戦後のインフレ対応と産業復興に辣腕を振るい、「法王」の呼び名とともに歴史に名を刻む。

黒田氏が後世に語り継がれるレガシー(遺産)は何か。2%の物価目標は残り2年3カ月の任期中の達成はもはや困難だ。株高や金利・為替の安定は大きいものの、「官製相場」は持続性に疑問が残る。コロナ禍を克服すべく金融緩和を続けつつ、市場機能の修復に向けた道筋をつけられるか。21年の黒田日銀の焦点となる。

(斉藤雄太)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン