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「黒い雨」訴訟、原告以外も救済 上告断念で首相談話

(更新)

政府は27日の持ち回り閣議で、広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」訴訟を巡る上告断念に関する菅義偉首相の談話を決定した。司法判断を踏まえ、原告を「一定の合理的根拠に基づいて被爆者と認定することは可能だ」と明記した。被爆者健康手帳の発行など救済措置を早急に講じる。

訴訟への参加・不参加にかかわらず「原告と同じような事情にある方々は、認定して救済できるよう対応する」と記した。

政府は長崎への原爆投下に伴う被爆者の救済も視野に入れていく。厚生労働省を中心に被爆者の認定条件や対象範囲を検討し、与党とも協議して法整備を急ぐ。

黒い雨が降った一部の区域で特例として被爆者と認める仕組みがある。訴訟の原告らは区域外だった。広島市などの推計で国の援護対象区域外で雨に遭うなどした人は1万3千人(原告、死者を除く)程度にのぼる。田村憲久厚労相は記者団に追加認定数の規模は「分からない」と話した。

首相は談話で原告全員を被爆者と認めた広島高裁判決に「原子爆弾の健康影響に関する過去の裁判例と整合しない点がある。重大な問題があり、本来であれば受け入れがたい」との見解を示した。

「黒い雨」や飲食物の摂取による内部被曝の影響を広く認めるべきだとした指摘には「被爆者援護制度の考え方と相いれないもので容認できない」と主張した。

広島高裁は14日の判決で、黒い雨を浴びながら国の援護を受けられないのは違法だと訴えた住民84人(うち14人死亡)全員を被爆者と認定した一審の広島地裁判決を支持した。28日の上告期限を前に、首相が26日に上告断念を表明。高裁判決が確定する。

談話は上告断念の判断理由について「被爆者援護法の理念に立ち返り、救済を図るべきだと考えた」と言及した。

政府はこれまでも訴訟の控訴断念などにあたり首相談話を出してきた。ハンセン病関係の訴訟では2001年に当時の小泉純一郎首相が、19年に安倍晋三首相がそれぞれ国の賠償責任を受け入れ、おわびを表明した。19年に旧優生保護法のもとで強制不妊手術を受けた障害者らの救済法が成立した際も、当時の安倍首相が談話を発表した。

21年5月には建設アスベスト(石綿)訴訟の原告への賠償を巡り、菅首相が原告団と面会し、国の賠償責任を認めておわびした対応もある。

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