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日本、G7首脳会議「1対6」 天安門で中国と欧米の板挟み(外交文書公開)

 宇野宗佑首相(手前左)が出席したアルシュ・サミット全体会合(1989年7月、パリ)=共同

日本が1989年7月の主要7カ国首脳会議(アルシュ・サミット)で、天安門事件の非難宣言を巡り、中国と欧米諸国の板挟みに苦慮した実態が23日公開の外交文書で判明した。対中関係維持に腐心する日本と、人権重視の欧米が「1対6」(元外務省幹部)の構図で激突。宇野宗佑首相は自ら交渉で「中国の孤立化回避」の文言を入れ込むなど融和に努めた。中国は日本に照準を定め、国際包囲網をかいくぐろうと試みる。

劣勢

「中国が孤立しないよう引き戻すのが日本の役割。中国は言葉とメンツを重んじる国で、下手をすると逆効果だ」。サミットを約10日後に控えた7月6日の官邸。宇野氏は村田良平外務次官らにこう告げた。

開催地フランスでは、外務省幹部が事前調整に苦しんでいた。議長国フランスは、フランス革命200周年記念日に合わせて開くサミットの主要議題として人権問題を設定。中国に関する宣言案には、要人接触の停止や世界銀行の対中新規融資の延期など具体的な制裁項目が列挙された。

「この文言に同意できないのは日本だけだ」(フランス)「日本の孤立は世界的批判を招くだろう」(イタリア)。難色を示す日本は7日の準備会合で集中砲火を浴びる。東京に送った極秘公電では「フランス案をたたき台とした議論を強いられた」と劣勢を伝えた。

妥協案

報告を受けた宇野氏は11日の打ち合わせで、準備会合で合意すれば宣言案を受け入れると決断。ただし「中国の孤立化を意図するものではない」との文言が入ることが条件と厳命した。

フランス入りした宇野氏は最終交渉に乗り出す。14日、思想家として知られるジャック・アタリ大統領顧問に「中国が自ら孤立化しないような改革を進める必要がある」と文言の主語をG7から中国に変える妥協案を提示。当初は文言挿入を拒んでいたアタリ氏から「巧妙な言い回しで問題ない」との譲歩を引き出し、日本の要求を踏まえた宣言の採択に成功した。

突破口

 大規模デモに参加する学生、市民ら(1989年5月、北京)=共同

中島敏次郎駐中国大使はサミット閉幕直後、中国の外務次官に「宣言は抑制されたバランスの取れたものとなった。宇野首相以下、日本の努力が実を結んだ」と語った。

サミットから約2カ月後の9月。中国は日中国交正常化に尽力した大平正芳元首相の盟友、伊東正義日中友好議員連盟会長(元外相)らを西側からは事件後初の大型訪中団として迎え入れた。

江沢民共産党総書記、李鵬首相が会談して最大級の歓待ぶりを見せ、重病説が流れた最高実力者、鄧小平氏も登場。鄧氏は「日本の態度は他の国、特に米国とは違う。日中友好は国内でも国際的にもやっていかねばならない」と持ち上げた。

中国はこの後、日本の経済人らを相次いで厚遇し、対日アプローチを強めていく。天安門事件当時、外相を務めた銭其琛元副首相は回顧録でこう振り返った。「日本は西側の対中制裁の連合戦線で最も弱い輪だ。おのずと良い突破口となった」〔共同〕

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