脱炭素へ「取り組む」91.9% 2050年実質ゼロ目標で関心  - 日本経済新聞
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脱炭素へ「取り組む」91.9% 2050年実質ゼロ目標で関心 

内閣府世論調査

内閣府は19日、「気候変動に関する世論調査」の結果を公表した。脱炭素社会の実現に向けて「取り組みたい」との回答が91.9%にのぼった。政府は2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、世論の関心は高まっている。

調査は菅義偉首相が昨年10月の所信表明演説で50年までに脱炭素社会を実現すると宣言した直後の11月5日から12月20日に実施した。脱炭素社会の実現に関する調査は初めて。

脱炭素へ個人として「積極的に取り組みたい」が24.8%、「ある程度取り組みたい」は67.1%だった。

新たに取り組んでみたい行動を複数回答で聞いたところ、最多は「地球温暖化への対策に取り組む企業の商品の購入など」の30.1%だった。「電気自動車(EV)などエコカーの選択など」の24.1%、「省エネ効果の高い家電製品を購入」の22.2%が続いた。

政府は昨年12月、EVの購入への補助金を従来の最大40万円から80万円に倍増させた。35年までに国内の新車販売でガソリン車をなくし、すべて電動車とする方針も打ち出す。こうした動きもEVへの世論の注目につながっているとみられる。

環境政策が専門の上智大大学院の井上直己准教授は世論の関心の高さについて「首相がグリーン化を経済成長に位置づけたのが大きい。国民が温暖化対策を前向きに捉えやすくなった」と指摘する。同時に「対策に消極的な企業には投資が集まらないというメッセージだ」と分析する。

温暖化対策を巡っては米国の動きも影響している。バイデン政権は2月に国際枠組み「パリ協定」に正式に復帰した。石炭などの産業界を意識し気候変動の影響を軽視していたトランプ前政権が離脱を決め、昨年の大統領選直後の11月4日に正式離脱していた。

今回の調査で協定を「知っている」と答えたのは84.0%だった。16年に日本が協定へ署名した直後に実施した「地球温暖化対策に関する世論調査」から24.4ポイント増えた。バイデン大統領が就任前から公約として唱えてきた国際協調路線が協定の知名度を押し上げた可能性がある。

パリ協定は産業革命前と比べた気温上昇幅が2度を十分に下回り、1.5度以下にとどまるよう目指す。今回調査で「内容まで知っている」は19.1%だった。16年調査より12.1ポイント上昇した。

地球温暖化の影響を感じるきっかけは「夏の暑さ」が89.8%、「雨の降り方の激しさ」が81.6%だった。3位の「桜の開花時期など」の38.5%を大きく引き離す。近年相次ぐ豪雨被害が気候変動への関心を高めている。

温暖化がもたらす影響で問題だと思うのは「農作物の品質や収穫量の低下、漁獲量の減少」が83.8%、「洪水、高潮・高波などによる気象災害の増加」が79.5%、「豪雨や暴風による停電や交通まひなどインフラ・ライフラインに被害」が73.9%だった。

政府に期待するのは「洪水、高潮・高波などへの防災対策」が68.3%、「農作物の品質や収穫量、漁獲量への対策」が64.1%、「情報提供」が52.9%だった。

調査は新型コロナウイルスへの感染を防ぐため、個別面接ではなく郵送方式をとった。3000人を対象に実施し回収率は58.9%だった。

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