インド製ワクチン増産支援 日米豪印、輸送まで一貫協力

日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国は12日夜、オンライン形式で初の首脳協議を開いた。13日未明にインド太平洋地域の途上国に新型コロナウイルスのワクチン供給を進める協力を記した共同声明を発表した。インドで製造するワクチンの増産や各国の輸送網整備を支援し、10億回分の製造体制を整える。
バイデン米大統領が呼びかけ、菅義偉首相、モリソン豪首相、モディ印首相が協議に参加した。
合意の柱はワクチンの生産から接種体制まで一貫して後押しする枠組みの構築だ。「日米豪印の精神」と題した共同声明の付属文書に明記した。中国が自国製を途上国に提供する「ワクチン外交」を意識した。

まずインド製薬会社「バイオロジカルE」のワクチン製造能力を高めるために米国が資金面で支える。米国際開発金融公社(DFC)が資金を拠出する。2022年末までに米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製を含むワクチンを少なくとも10億回分製造できる体制をつくる。
日本はインドのワクチン製造を増やすために国際協力機構(JICA)を通じて同国政府に円借款を供与する。途上国でコールドチェーン(低温物流)を築くよう促す。
輸送車両や保冷設備などの導入へ日本は45億円の円借款を実行する。豪州も東南アジアの輸送網整備に資金を出す。
ワクチン協力に加え、先端技術、気候変動に関する計3つの作業部会も立ち上げる。
先端技術は高速通信規格「5G」の整備など通信に関する連携を進める。サプライチェーン(供給網)に関する対話も始める。米国が中国依存を改める方針を示す半導体やレアアース(希土類)などが念頭にある。
気候変動分野は温暖化ガスの排出量が少ない技術開発が議題になる。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の履行に向けて協調する。
共同声明は海洋安全保障にも触れた。中国が現状変更の試みを続ける東シナ海・南シナ海問題について「ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対応するべく、協力を促進する」と明記した。中国の名指しは避けた。
中国は2月に海警局を準軍事組織に位置付ける海警法を施行した。同局の船は沖縄県・尖閣諸島周辺への領海侵入を繰り返しており、日本は警戒感を強める。菅首相は協議の場で、海警法を巡り「深刻に懸念している」と明言した。
声明で国軍によるクーデターで揺れるミャンマー情勢に関し、同国の民主主義を回復させる必要性を訴えた。北朝鮮による日本人拉致問題の即時解決の重要性も示した。

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