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迷走の末「イージス艦」に回帰 政府が地上配備代替策

海上自衛隊の「こんごう」型イージス艦「ちょうかい」(左)(2006年10月29日、神奈川県沖の相模湾)

防衛省は9日、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策を自民、公明両党に示した。ミサイル防衛を主任務とする「イージス・システム搭載艦」を2隻新造する。想定外の導入コストの膨張や地元説得の失敗で迷走した末、洋上での対処に回帰する。

来週中に2隻新造を決め、イージス・アショアは正式に中止する。

イージス・アショアは北朝鮮など周辺国のミサイルから日本を24時間態勢で防衛する切り札としてきた。イージス艦とあわせ、陸と海で日本全域を守るという2017年以来の計画は3年で振り出しに戻り、海を中心としたミサイル対処の運用を再検討する。

計画の発端は16~17年に北朝鮮によるミサイル発射が相次いだことだった。日本列島に落下しないよう洋上から迎撃する態勢をとった。自衛艦隊の防護を主任務とするイージス艦がミサイル防衛にかりだされ、海上自衛隊の負担は増した。

そこで政府は地上で常時監視できる米国製のイージス・アショアに目を付け、1年足らずの検討で17年末に急ぎ決めた。その後、秋田、山口両県に配備して陸上自衛隊が運用する計画を立てた。

同年就任したトランプ米大統領は巨額の対日貿易赤字を削減するため、日本に防衛装備品の購入拡大を迫っていた事情もあった。

ところが計画は迷走する。地元での住民説明会で防衛省作成の説明資料に誤りがあり、内容も二転三転。迎撃時にミサイルのブースター(推進装置)が市街地に落ちる可能性が発覚し住民の懸念が高まった。大幅なシステム改修が必要となり、河野太郎前防衛相が急きょ計画を停止した。

当初は白紙撤回も視野にあったものの、システム自体は活用する判断をした。米国の反発に加え、巨額の違約金が発生する懸念があったためだ。

混乱は日米の意思疎通の不備を浮き彫りにした。

岸防衛相は自民党本部でミサイル防衛政策を説明した(9日、自民党本部)

導入を決めた安倍晋三前首相とトランプ氏は個人的な信頼関係を築いたが、実務レベルでの食い違いが目立った。導入決定時に米側からブースターの落下地点の議論はなかった。日本側の中止表明も米側には寝耳に水。事務レベルの意思疎通が不十分では有事対応にも不安が残る。

この間にも中国は軍備拡充を進め、北朝鮮は変則軌道の新型ミサイルを開発した。時間を浪費した代償は大きい。

ミサイル防衛態勢の抜本見直しに伴い、ミサイル攻撃を防ぐため相手領域内の基地をたたく敵基地攻撃能力を巡る議論を始めたが、政府・与党内で協議は進まなかった。安倍前政権が9月の談話で年内に定めるとしたミサイル阻止の新方針も具体化できずにいる。

政府の方針が定まらぬまま装備拡充は進む。岸信夫防衛相は9日、国産の地対艦誘導弾の射程を伸ばし、敵ミサイルの射程圏外からも攻撃できる長射程巡航ミサイルとして開発する方針を示した。敵基地攻撃に転用できるとの指摘がある。

イージス・アショアの代替案となる艦船の設計や搭載機能の検討は来年に持ち越した。日本周辺の安全保障環境が厳しくなるなか、ミサイル防衛政策は課題を残したまま年を越す。

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