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安倍元首相の回顧録発売 「習氏は強烈なリアリスト」

「トランプ氏は、とにかく型破り」

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安倍晋三元首相が歴代最長の通算8年8カ月の政権をインタビューで振り返った「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)が8日発売された。首脳会談でトランプ前米大統領や中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席らと交わした会話などが語られている。

トランプ氏については「とにかく型破りだった」と評した。ゴルフ外交を含む関係づくりの狙いでは「現実問題として、日本が(トランプ氏の)標的になったら国全体が厳しい状況に陥る。話し合える環境をつくることが重要だった」と述べた。

トランプ氏に西側世界のリーダーという認識はなく「米中の問題は貿易バランス、米ロは安全保障というふうに2国間で物事を考えていた」とも指摘。トランプ氏には「自由世界のリーダーとして振る舞ってほしい」と訴え続けたという。

一方でオバマ元大統領とは「仕事の話しかしなかった。友達みたいな関係を築くのは難しいタイプだ」と言及した。

習氏に関しては2018年ごろから会談で事前に用意された発言要領を読まずに発言するようになり、習氏の権力基盤は固まりつつあるとみていたという。

習氏があるとき「もし米国に生まれていたら米国の共産党には入らないだろう。民主党か共和党に入党する」と発言したと明らかにし「強烈なリアリストだ」と分析していた。

日中関係では「安保上の課題をマネージしながら、経済面では中国の市場的価値を日本のチャンスに変えていくことが政治の技術だ」と唱えた。

在任中に計27回会談したロシアのプーチン大統領は「クールな感じに見えるが意外に気さく」との評価だった。

「回顧録」では衆院解散といった政局の判断にも言及している。

17年衆院選では小池百合子東京都知事による「希望の党」結党を受け「小池さんにやられた、これは大変なことになったと思った」と顧みた。ゲームで特殊な効果を発揮する「ジョーカー」「彼女を支えている原動力は上昇志向だ」といった表現で小池氏に触れた。

財務省への批判も目立つ。「予算編成を担う財務省の力は強力だ。自分たちの意向に従わない政権を平気で倒しに来る」と警戒感をにじませた。

消費税率10%への引き上げ先送りを掲げた14年11月の衆院解散に際し「増税論者を黙らせるためには、解散に打って出るしかないと思った」と話した。

安倍氏は政権運営で麻生太郎、菅義偉、甘利明の各氏との関係を重視した。理由として「安倍政権が倒されるとしたら敵ではなく身内だ」との認識を示した。自民党内に「この4人は全く崩れていないとアピールしたかった」と強調した。

長期政権の起点となる12年秋の党総裁選に出馬する気になったきっかけは「菅さんの言葉だ」と明かした。

安倍氏の自宅で菅氏から「ぜひ出るべきだ」と促され、その後、谷垣禎一氏の立候補を支持していた麻生氏に相談し「麻生さんの支持が得られなければ出馬しません」と伝えたという。

収録されたインタビューは安倍氏の首相退任後の20年10月から1年ほどの間に計18回、36時間にわたり実施された。中央公論新社によると、22年初めに刊行予定だったが安倍氏からの要請で発売を延期。死去後に昭恵夫人の同意を得て出版が決まった。

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