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H&Mやファストリ、廃棄ゼロへ 素材・製造方法を変更

SDGsが変えるミライ

ファッション業界が環境問題への対応を本格化している。スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)やファーストリテイリングなどは原材料やデザインから製造工程を見直し「廃棄ゼロ」を目指す。資源依存を減らせば事業リスクが軽減できるだけでなく、廃棄の減少で温暖化ガスの抑制にもつながる。消費者が環境や社会に配慮した商品を選ぶ動きが強まっていることも大きい。

H&Mは環境負荷を低減した商品群「サイエンス・ストーリー」の販売を開始した

革のかわりにサボテン

サボテンが革のサンダルに、ヒマシ油がワンピースやトップスに――。スウェーデンのアパレル大手、ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は18日、環境負荷を低減した新たな商品群「サイエンス・ストーリー」を発売した。今年1年を通じて注力する環境負荷の少ない素材や製造過程を採用した商品シリーズの第1弾だ。

ウチワサボテンは、動物愛護の観点や環境汚染リスクから批判が多い革の代替に使う。農薬を使わない有機栽培で育ち、1度植えれば何年にもわたり収穫可能だという。ヒマシ油は、乾燥した土壌で自然に育ち大量の水を必要としない植物トウゴマの種子からとれる。ヒマシ油から作った繊維は、石油由来のナイロンなどに比べ環境負荷を大きく低減できる。

H&M、2030年までに全商品に

H&Mはこれまでも有機栽培のコットンや使用済みペットボトルをリサイクルしたポリエステルを使った商品を出してきた。こうした取り組みを進めるのは、「(企業としての)回復力と適応力を高め、持続可能で収益性の高い成長につながる」(ヘレナ・ヘルマーソン最高経営責任者)と考えているためだ。30年までに全商品でリサイクルした素材かその他の持続可能な素材を使うことを目標とする。

株式時価総額でH&Mや「ZARA」を展開するスペインのインディテックスを抜き、世界最大のアパレルメーカーとなったファーストリテイリング。2月に初めてサステナビリティー(持続可能性)に特化したオンライン会見を開催した。柳井正会長兼社長は「地球が有限であることを自覚する必要がある」と強調した。

SDGs意識調査へ参加する

 環境への取り組みを、オンラインで説明したファーストリテイリングの柳井正会長兼社長=2月2日

ユニクロ「リサイクルダウン」発売

ファストリはここ数年で環境負荷低減の取り組みを加速させている。18年にジーンズの加工工程の水使用量を最大99%削減する技術を開発。グループ傘下の全ブランドにこの技術を導入している。傘下のユニクロでは顧客から不要になった衣類を回収し新たな商品にする「RE.UNIQLO」を開始。第1弾として、回収したダウン商品から作った「リサイクルダウンジャケット」を昨年11月に売り出した。

独アディダスは19年、100%再生可能なスニーカーを披露した。一般的なスニーカーは様々な素材や接着剤を使い、リサイクルが難しい。アディダスは靴底から靴ひもまですべて単一素材にして接着剤も使わず、最初から再生できるように設計し直した。21年に商品化する予定だ。日本のアシックスも3月、素材や染色工程を工夫したランニングシューズを発売すると発表した。

「ボトムアップで若い人の支持」

高級ブランド「グッチ」を傘下に持つ仏ケリングは環境負荷の定量化に取り組んでいる。二酸化炭素(CO2)排出量や水使用量、廃棄物など6項目につき、原材料から流通・販売までサプライチェーン(供給網)全体にわたる環境負荷を測定、金額換算する。19年は5億2430万ユーロ。売上高1000ユーロあたりに直すと33ユーロだ。同社は25年までにこの数字を28ユーロに引き下げる目標を掲げる。

アパレル各社が環境対応を本格化させる背景には、環境にも人権にも配慮した「サステナブルファッション」に対する需要の高まりがある。国内では女性ファッション誌がサステナブルファッションや関連するお金の流れの特集を組むなどし、「ボトム・アップで若い人の支持を得始めている」とFTSEラッセルでアジア太平洋地域ESG責任者を務めた、ESG投資の専門家である岸上有沙氏は指摘する。

若い人、12%高くても許容

実際、消費者の意識は変わっている。UBSが20年に日本の消費者1000人に実施した調査でも過半の消費者が「環境・社会に配慮した商品により高い価格を支払う」と回答した。環境に配慮した製品、社会に配慮した製品ともに通常の製品より平均7.7%高い価格を支払うという。年代別では若いほど高い価格を払うとの回答が多く、18~24歳は平均12%超の上乗せを許容する結果となった。

UBS証券の守屋のぞみアナリストは「ESGへの取り組みはコスト増ばかりに目がいくが、消費者の意識は変化している。取り組みが消費者に評価されれば、値段が高くても受け入れられ、企業業績の拡大にもつながる」と話す。

ファッション業界では長らく人権問題は大きな課題と捉えられてきた。1997年には米ナイキの児童労働問題が明らかになり、2013年にはバングラデシュで多数のブランドの縫製工場が入った商業ビル「ラナプラザ」の崩落事故が発生。下請けを担う新興国での劣悪な労働環境が社会問題化し、アパレル各社も取引先工場の情報開示や監査など取り組みを進めてきた。

世界第2位の汚染産業

一方、環境問題への対応は遅れていた。季節ごとに流行を追う大量生産・大量消費のモデルが定着し、売れ残った商品は大量に廃棄に回る。安価なファストファッション人気がこうした動きを加速させた。「ファッション業界は世界第2位の環境汚染産業」(国連貿易開発会議)とされるゆえんだ。

国連は19年、「毎年、500万人の生存を可能にする量の水を使用している」「衣料品と履物の製造で全世界の温暖化ガスの8%を占めている」などとファッションの流行を追うことによる悪影響を指摘。環境負荷の高さを示し、警鐘を鳴らした。

鎌倉サステナビリティ研究所の青沼愛・代表理事は、「大量生産やセールありきの価格設定など、これまでの事業モデルの抜本的な見直しがいる。転換を後押しするには、政府の関与も必要」と話す。

たとえば、フランスでは20年に売れ残った衣服の廃棄を禁止する法律が施行された。欧州連合(EU)も昨年、繊維を含む幅広い産業を対象に長寿命化やリサイクルの促進などを目指す戦略を出した。EUは大量生産・大量消費を前提とした経済から、廃棄ゼロを目指す「循環型経済」に経済構造そのものを転換させることを狙う。

廃棄が減ればCO2削減も

サステナブル・ファッションは国連が30年までに達成を目指す17の目標SDGs(持続可能な開発目標)の面からも重要だ。12番目の「つくる責任 つかう責任」には30年までの廃棄物の大幅削減などが含まれる。また、廃棄物の焼却が減ればCO2削減につながり、13番目の「気候変動に具体的な対策を」にも貢献する。

環境問題に対する投資家や消費者の意識は高まる一方だ。ファッション業界の環境対応はまだ始まったばかりだが、「衣料品を扱う百貨店や原材料の輸出入に関わる商社などにも関連する重要なテーマ」(富国生命投資顧問の葎嶋真理ESGアナリスト)との声も上がる。CO2排出量だけでなく、環境負荷全般をいかに下げるか。企業は今後ますます問われることになりそうだ。

(ESGエディター 松本裕子)

「SDGsが変えるミライ」
BSテレビ東京では日経スペシャルとして特番『SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査~』を3月19日(金)夜9時から放送します。それに合わせ本コーナーではSDGs関連記事をピックアップし、お届けいたします。

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