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京都文化をデジタル保存 立命館大ARC

時を刻む

文化財をデジタルデータ化して保存する流れが加速している。膨れ上がる文化ビッグデータをどう活用すべきか。約20年にわたって京都文化のアーカイブを進める立命館大アート・リサーチセンター(ARC)の取り組みが注目されている。

仮想空間に再現された京都の街を進む祇園祭の山鉾(やまほこ)。2022年に復活する「鷹山(たかやま)」のCG(コンピューターグラフィックス)を一足早くウェブ上で公開しているのは、ARCが開設するサイト「祇園祭デジタル・ミュージアム2021」だ。地図上で巡行経路の変遷を追ったり、船鉾の骨組みを透視する3次元動画を眺めたり、鉾町に伝わる古文書を検索したりと多彩なコンテンツを楽しめる。

デジタル本格化

公開を始めたのは20年夏。コロナ禍で山鉾巡行が中止されたのを受けて「長年積み上げた膨大なデータベースから祇園祭関連の情報を整理した」と副センター長の矢野桂司教授(地理情報科学)は説明する。

ARCでは2000年代初頭から京都文化のデジタル保存を本格化し、02年に「バーチャル京都」を発表した。古地図や絵図、古文書、発掘成果など多様な情報をデジタル化し、地理情報システム(GIS)や仮想現実(VR)技術を駆使して古都の歴史的景観を復元。平安期から現代まで変容を可視化するプロジェクトで、今も国内外にリンクを張り巡らせて発展を続けている。柱の一つが祇園祭のアーカイブだ。

最初に祇園祭船鉾保存会の協力を得た。数百に上る鉾の部材や装飾品を1点ずつ3次元計測し鉾建て(組み立て)の作業過程も記録するなど「船鉾町が伝える有形、無形の文化財全てをデジタルで保存した」(矢野教授)。「祇園祭を五感で体感できる」仕組みづくりにも挑んだ。巡行する船鉾に加速度センサーやカメラなどを装着し、祇園囃子(ばやし)や鉾がきしむ音、縦横の揺れなど様々なデータを記録。振動台や立体映像と同期させ、臨場感あふれる巡行体験アトラクションに仕立てて13年に発表した。現在、調査と保存の対象は八幡山(はちまんやま)や鷹山など他の山鉾町に広がりつつある。

この20年でレーザー光やデジタル写真による3次元計測技術と情報通信技術は日進月歩で進化したが、デジタル化する作業は今も地道でアナログだ。昭和初期の京都市明細図をデータベース化した際は記載された約16万の建物の外形を1つずつ手でなぞり、用途や業種など情報と併せて手作業で入力した。「いくつかの山鉾町で町内に残る古文書を全部出してもらって1ページずつ撮影。その後で祇園祭に関する記録を判別した」と佐藤弘隆特任助教(人文地理学)はいう。

町の景観を復元

膨大な情報をどう活用するか。ARCで基軸とするのが「地図上に落とす」ことだ。「データを集めて位置情報で串を刺す。古文書で得られる地名や事象も当時の地図上に可視化する。異なるコンテンツを時空間上で重ね合わせることで発見が生まれ、新しい知を生む」と矢野教授は強調する。

一例が佐藤特任助教が21年3月にARC紀要で発表した研究成果。アーカイブした明治前期の町絵図や家券簿、戸籍などを駆使し、位置情報と「屋敷の用途」「持ち家か借家か」「職業は何か」といった情報を重ね合わせることで、ある町内の景観を復元した。佐藤特任助教は「祭りのためにどう人や金を集めていたのか等、町内の社会まで復元したい」と意欲をみせる。

最近は昭和期など昔日の京都を捉えた写真や動画のアーカイブに力を入れる。「ウェブで共有すれば様々な学問分野の人が互いに刺激しあえる。それをサポートする技術開発が鍵だ」。矢野教授はこう説く。

(編集委員 竹内義治)

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