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[社説]効果的で賢い予算編成へ議論を深めよ

感染症や物価高への対策、脱炭素の推進と少子化対策の充実、そして防衛力の強化。財政の規律を保ちつつ、これらの課題にどう対応するのか。効果的で賢い政府予算の必要性は高まる一方だ。

政府は29日、2023年度予算の概算要求基準を閣議了解した。基準に沿って各省庁が8月末までに要求を提出し、年末に向けた予算編成が本格化する。

重要政策を推進するための「重点枠」を設け、年金・医療など社会保障費の伸びを高齢化に伴う自然増に抑えるなど、要求基準の大枠は例年をほぼ踏襲した。

ただし、今回は金額を明記しない「事項要求」を認める項目が続出した。年末までに内容や予算計上額を詰めることになる。

そのひとつが防衛費だ。長らく国内総生産(GDP)比で1%程度にとどめてきたが、自民党は参院選の公約で同2%以上を念頭に5年以内に増やす方針を掲げた。

中国やロシア、北朝鮮といった周辺の厳しい安全保障環境を踏まえ、防衛力の強化は重要だ。だが「国防予算」として海上保安庁の支出項目などを加えたとしても、2%以上まで高めるには兆円単位の歳出増が求められる。

最初から金額ありきではなく、費用対効果を慎重に見極め、中長期にみて防衛力の向上に資する使い方を追求してもらいたい。財源を増税などの国民負担で賄うのか、国債発行で調達するのかも含め、国民的な議論が不可欠だ。

脱炭素の推進策も財源論に直面する。政府は今後10年間で、次世代送電網の整備や蓄電池の製造拡大など官民で150兆円超の投資喚起を目指す。これを先導するための政府資金を将来の財源の裏付けをもったGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債で先行調達する方針だ。この償還財源を詰める必要がある。

新型コロナウイルス禍の克服はなお最重要課題だ。今回も必要額が見通しにくいとして事項要求を認めるが、これまで巨額の予算を投じながら、医療体制の確保などで十分な成果が上がったとは言い難い。反省を踏まえ、政策を点検しなければならない。

重点枠は人への投資など「新しい資本主義」の実現に向けた政策を要求できる。だが過去の重点枠で散見されたように、看板政策の名目で不要な事業の予算を求めるのは許されない。各省庁は節度ある要求を心がけるべきだ。

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