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ボイラーで最適解 次世代エネにも対応 宮内大介三浦工業社長執行役員CEO

脱炭素社会 創る

ボイラー大手の三浦工業が2050年の脱炭素社会をにらんだ動きを加速させている。ボイラーは工場から商店などまで幅広く使われ、あらゆる産業に欠かせない。ICT(情報通信技術)と熟練メンテナンス員によりベストでクリーンな熱エネルギー供給をめざす。宮内大介社長執行役員CEO(最高経営責任者)は「『熱のソムリエ』としてクリーンな熱を供給するのが我々のパーパス(存在意義)だ」と強調。水素社会も見据え、着々と協業を図っている。

「熱のソムリエ」 国内シェア6割近く

産業革命前に比べ世界の平均気温上昇を1・5度以内に抑えるため、脱炭素社会の実現が急務になっている。当社も50年のカーボンニュートラルに向け、スコープ3を含むサプライチェーン全体で30年の二酸化炭素(CO2)排出を削減する目標について、22年3月末をめどに策定を急いでいるところだ。

「脱炭素」「カーボンニュートラル」というのは最後にある一つのゴールとして設定されているが、100か0(ゼロ)の議論のように簡単にいくものではない。あくまで今から低炭素化に手をつけ、低炭素の実現を通して脱炭素へと向かうステップを描けるか。これが脱炭素に向かって進む本当のポイントだと確信している。

当社は「小型貫流ボイラー」で58・6%の国内トップシェアを持つ。小型貫流ボイラーは水を金属管(缶体)に通しながら加熱し、蒸気を一方通行で外部に放出する。町のクリーニング店や商店から大工場の熱源、冷暖房まで幅広く使われている。

まずは低炭素へ省エネを

ボイラーはボイラー技士の従事が必須だったが、1959年に小型貫流ボイラーは無免許で使えるようになった。創業者の三浦保がこのチャンスを見逃さず、給水や燃焼を自動化した小型ボイラーの研究を始め、同年に開発したのが「小型貫流ボイラZP型」だ。2015年には日本機械学会の機械遺産にも認定された。石油ショックに伴う省エネブームなどもあり、その後も高効率のボイラーを次々と開発し、現在の地位を築いた。

19年度の日本の部門別CO2排出量をみると、産業部門は全体の25・2%を占める。産業部門のうち熱利用の割合は約6割と大きい。カーボンニュートラルというと、エネルギー源からみて「これだけの電気を使っています」「石炭を使っています」「だから減らしましょう」といった議論になる。だがそれは使う必要があるからで、まずは低炭素に向けた省エネを顧客企業に働きかけていきたい。

「お客様の工場ではこの熱の供給方法がベストですよ」といったコンサルティングをしていく。例えば、食品工場で製造機械の洗浄に80度のお湯を使い、それが60度に下がったとする。そのままでは温度が高すぎるため冷やして排水するが、60度のお湯のほかの使い道を探したり、ヒートポンプで80度に上げたりすれば再び使える。捨てられていた熱の有効利用だ。

1989年からオンラインメンテナンスサービスを始めた。松山市の本社から6万台以上のボイラーを遠隔監視し、稼働データを24時間365日取得している。異常な高温や水圧の低下などを検出すると、ボイラーから自動的に警報が入り、必要に応じて、全国に約100カ所ある営業拠点に合計で1200人以上いるメンテナンス員「フィールドエンジニア」が現場に駆けつける仕組みだ。

選択肢増やしコスト吸収

当社のボイラーの燃料はガスに次いで重油が使われている。今後、カーボンニュートラルのガスがあるかもしれないし、アンモニアや水素が次世代燃料として普及するかもしれない。水素とCO2を反応させ、メタンを合成する「メタネーション」も現実的にあるだろう。将来のエネルギーは10年、20年かけて何がベストか模索していくことになる。その場合も省エネを徹底し、必要なエネルギー量を小さくしておけば、次世代エネルギーのコストが多少高くても選択肢が増えることになる。

オンラインメンテナンスやフィールドエンジニアは顧客に安定した熱を供給するうえで、当社の強みとなる。2050年のカーボンニュートラルを見据え、水素を含め様々なエネルギー源が出てくるだろうが、どのようなエネルギー源であっても当社は対応していく。「熱のソムリエ」として、クリーンな熱を供給するのが我々のパーパスだと考えている。

水素社会にらみ相次ぎ協業、新技術確立へ


 「我々は熱のプロ、熱のソムリエ。燃焼については幅広いエネルギー源に対応できる力をつけていきたいし、今もトライしている」。宮内大介社長執行役員CEOは力説する。水素を燃料とするボイラーをすでに開発済みで、様々な企業と共同で将来の水素社会を見据えたステップを踏み出している。
 2021年9月には東京電力ホールディングス東レ日立造船、シーメンス・エナジー(東京・品川)などと山梨県による事業に参画した。再生可能エネルギーで発電した電力から水素をつくる事業だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が助成事業に採択した。
 事業期間は25年度までの5年間。再生エネ由来の電力を送電線で運び、水電解装置を稼働させる。発生した水素は工場にあるボイラーの燃料として利用し、工場内で熱として使う。三浦工業は今回の実証実験で再生エネ由来のグリーン水素燃料を活用した、効率の高い蒸気ボイラーを開発するという。
 三浦工業は17年に運転時のCO2排出がゼロになる水素燃料の貫流蒸気ボイラーを発売した。21年5月には、低NOX(窒素酸化物)バーナーを搭載した水素燃料貫流ボイラーが、東京都の認定を受けた。これは全国の自治体で初めての事例となった。
 こうしたボイラーの燃料は現時点で工場から出る副生水素が主流だが、今後は水電解で製造した水素やCCS(二酸化炭素の回収・貯留)を用いて褐炭から製造する水素などの需要が見込まれる。ただ水素は天然ガスやA重油と比べ燃焼時の温度が高くNOX発生量が多くなる課題があった。そこで環境規制の厳しい都市部でも利用できる低NOXバーナーを開発した。
 このほか、19年に出資したスタートアップ企業、クリーンプラネット(東京・千代田)と量子水素エネルギーを利用した産業用ボイラーの共同開発を進めている。量子水素エネルギーは通常の水素を上回るエネルギーを生み出す新技術。実用化に向けた技術確立が期待される。
 ボイラーの販売先であるアジアや米州では、日本と似たような「プレメンテナンス」の考え方が広がりつつあるという。「当社は顧客との距離が近い。需要家を分かっているからこそ海外でもカーボンニュートラルに貢献できる」。宮内社長は力を込める。エネルギーを使う企業のニーズを知り尽くし、先回りして製品を提供する。そんな挑戦を続けている。

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