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社会課題解決で成長 金融飛び越え挑む 木原正裕みずほフィナンシャルグループ社長

脱炭素社会 創る

みずほフィナンシャルグループ(FG)が投融資を軸に、脱炭素社会の実現に向けた意欲的な試みに着手した。500億円の「トランジション(移行)出資枠」を新たに設け、脱炭素に資する技術開発に出資する。人材を派遣し、実用化に向けた資金支援も手がける。メガバンク初の平成入行トップとして2月に就任した木原正裕社長は、社会課題の解決に貢献することが成長を支えるとして「金融の枠を飛び越え事業を展開していきたい」と力を込める。

500億円枠、技術の種に出資

金融機関にとって難題なのがスコープ3と呼ぶ自社以外からの排出量だ。投融資先の排出量削減、つまり取引先の脱炭素への移行をファイナンスで支えていくことが当社の責務だ。

脱炭素社会の実現に向けた技術はまだ実証段階。こうしたプロジェクトに、金融機関として顧客企業とリスクをシェアできないかとずっと考えてきた。そうしたなか、投資額500億円を視野に「トランジション出資枠」の運用を4月に始めた。

新設した出資枠はスタートアップやベンチャーキャピタルへの一般的な投融資とは異なり、シード(技術の種)やアーリーステージ(初期段階)をはじめとする創業・実証段階のプロジェクトにエクイティ(株主資本)を出す試みだ。これまでの「銀行発想」では実現できなかったことへの挑戦でもある。

130人超の目利き力

想定している技術は水素やCCUS(CO2の回収・再利用・貯留)など様々だ。傘下のみずほリサーチ&テクノロジーズが抱える環境・エネルギー分野の専門家は130人を超える。その目利き力に、みずほ銀行産業調査部の知見も融合し、事業リスクを取りにいく。社員の派遣で事業に対する理解も深める。投資した技術が実用段階になれば、先頭に立って資金調達を支援することで、脱炭素に資する技術革新に貢献したい。

日本政府は2021年4月、日本の温暖化ガス排出量について30年度の削減目標(13年度比)を26%減から46%減に引き上げた。これは相当野心的な目標だ。

太陽光発電や陸上風力発電といった再生可能エネルギーへの置き換えは一般的になり、今後は洋上風力発電も本格化する。その半面、水素やアンモニアの混焼によるCO2削減はこれから実証段階なのが実情だ。

企業は政府の国際公約を受けて急速に動き始め、まずは再生エネの導入に着手した。ただ、現行では全社レベルで脱炭素に向け、事業構造を転換する新たなフェーズに入っている。

当社は、石炭火力発電所向けの与信残高を30年度までに19年度比で50%減、40年度までにはゼロにする。その一方で、CO2排出量の多い「ブラウン」の領域だからといって、即ダイベスト(投融資引き揚げ)するのではなく、脱炭素社会を実現するため、顧客企業とのエンゲージメント(建設的な対話)を行っていこうと考えている。

ロシアのウクライナ侵攻に伴い、石炭復活などの形で脱炭素の動きはいったん棚上げされるとの見方も一部にはある。しかし脱炭素の動きは不可逆的で、むしろ加速するだろうとみている。企業経営者にとって脱炭素が経営戦略の「一丁目一番地」になっているからだ。

サステナ投融資で首位

企業は「脱炭素」と「資本効率の向上」の両立を求められることになる。非中核事業を売却して脱炭素への移行に必要な資金をつくるといった動きが加速度的に広がっていくだろう。

当社のサステナブルファイナンスの長期目標(19~30年度)は累計25兆円。21年度までの3年間で目標の半分に達した。国内のSDGs(持続可能な開発目標)債のストラクチャリング・エージェントとしては2年連続の首位となった。トランジションファイナンスでも、フロントランナーとしてこの分野を開拓し、実績を積んできた。

当社は3つの金融グループ結集で生まれた。旧第一勧業銀行の源流は「道徳経済合一説」を唱えた渋沢栄一が創設した日本初の民間銀行だ。旧富士銀行の前身を設立した安田善次郎は政府発行の紙幣流通や公債発行などの資金を提供した。旧日本興業銀行の中興の祖・中山素平は日本の産業育成に尽力した。

それぞれが社会課題の解決というDNAを持ち、受け継いできた。みずほFGとしても、金融の枠を飛び越えて事業を展開し、社会課題解決への貢献と我々自身の成長をめざしたい。

銀行からコンサルまで 戦略立案支援に強み


 企業がサプライチェーンまで含めて脱炭素を実現するには事業ポートフォリオの入れ替え、新しい事業機会の創出、クレジット(排出枠)活用といった「事業者目線」に加え、サステナブルファイナンス、CO2排出量の見える化をはじめとする非財務情報の開示、ESG(環境・社会・企業統治)の格付け分析など「投資家目線」の両方が必要だ。移行シナリオなど長期経営計画の立案も欠かせない。
 「銀行、証券、信託、リース、そしてコンサルティング。グループ内で連携し、顧客にとって最適なカーボンニュートラルのソリューション(解決策)を提供できる」。みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は強調する。みずほ銀行産業調査部には100人近いアナリスト、みずほリサーチ&テクノロジーズには130人を超える環境・エネルギー分野のコンサルタントが在籍する。金融から非金融分野までワンストップで対応できることが強みだという。
 こうした体制も後押しして、例えば国内SDGs債引き受け実績(21年度6973億円)などで首位を維持している。サステナブルファイナンスの実行を支援する「ストラクチャリング・エージェント」でも21年度は31件と首位だった。
 金融機関としての取り組みも活発だ。21年7月には温暖化ガス排出量の算定方法を開発する国際組織「PCAF」に日本の金融機関として初めて加盟。11月にはPCAF日本版の議長に就き、投融資を通じた温暖化ガスの算定・開示が広く普及するよう働きかけている。
 同10月には、投融資ポートフォリオを通じたネットゼロをめざす銀行間の国際イニシアチブ「NZBA」にも加盟した。スコープ3の中長期目標を22年度末までに設定すると表明した。22年2月には5億㌦のグリーンボンドを発行した。調達した資金を使い、みずほ銀行が再生可能エネルギーなどの事業に融資する。
 みずほ誕生から20年あまり、みずほ銀行では21年2月以降にシステム障害が相次いだ。この結果「新しいことがやや停滞した。失敗から教訓を得て、前を向き新しいことにチャレンジしていけるカルチャーをつくりたい」(木原氏)。実はトランジション出資枠も社員の雑談から生まれたアイデアを具現化したものだという。「小さくても社会課題の解決へ新しいことをやる積み重ねがみずほを変えていく」。ワイガヤが生む化学反応にも期待を寄せている。

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