/

和田誠展 好奇心の塊だったイラストレーターの画業回顧

イラストレーター、グラフィック・デザイナーの和田誠が83歳で亡くなって2年、初めての大規模回顧展が開かれている(12月19日まで、東京オペラシティ アートギャラリー)。エッセイスト、作詞・作曲家、映画監督でもあった多彩な仕事を会場で一覧すると、開放的な戦後文化の豊かさがしのばれる。

好奇心の塊だった和田の創作は、次から次へと横に広がっていった。自身、仕事ぶりを「芋づる式」だったと語っていたといわれる。絵を描けばその物語が書きたくなるといった具合に、ひとつの作品が別の作品を呼び、しかもそれらすべてが和田誠テイストと呼びたくなる柔らかみ、寛容さを備えているのだ。

たとえば星新一の子供向けショートショートのイラストや谷川俊太郎の絵本は読み手に豊かな想像を膨らませるものだったことがわかる。「多くの画家は大事なオチを絵にしてしまう」。そんな言葉で自らを戒めていた和田は、これから読む人の好奇心を引き出すような挿絵をユーモラスに描いている。熱狂的な映画ファンで落語通だっただけに、あくまでも楽しむ側の思いに沿っていたのだろう。演劇のポスターを多数手がけ、つかこうへい事務所や井上ひさし主宰のこまつ座ではおなじみのイメージを決定づけもした。幅広い観客を招き入れる包容力を感じさせ、演劇の娯楽性が浮き立っていた。

父は築地小劇場の創立メンバーで音響効果の草分けだった和田精であり、母や祖母も文化を大切にする人だったから、幼少期から絵心がすくすくと育った。戦後の開放的な空気が多面体の才能をつくったことは、手書き文字のまま書籍化された「だいありぃ 和田誠の日記 1953~1956」(文芸春秋)に明らかだ。展覧会場で感じられるのは「なんでも面白がろう」とする雑誌の時代のエネルギーで、それが和田誠という存在を押し出したことがわかる。好奇心こそが社会や経済に活気をもたらす、そんな感慨がわいてくる。和田誠を回顧する意味もそのあたりにあるだろう。

(内田洋一)

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン