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[社説]育児支援の財源は消費税を封印するな

消費増税を封印した議論では限界があるのではないか。岸田文雄政権が進める新たな少子化対策の財源確保のことである。

政府は2024年度から3年間を集中期間とし、児童手当や育児休業給付の拡充、就労状況に関わらず保育所に通いやすい制度などの実現を目指している。

集中期間に年3兆円規模の追加予算を確保し、その後さらに拡大する構えだ。社会保障費を中心に歳出削減を進めつつ、26年までに国民に広く負担を求める安定財源も確保する方向だが、制度化までは「つなぎ国債」の発行も視野に入れている。

医療、介護など既存の社会保障の効率化は極めて重要だ。これらの保険料を抑制できれば、そのこと自体が育児世帯の支援につながる。ただ歳出削減を少子化対策の財源とするなら、具体的な改革の項目や期限を示す必要がある。それができない努力目標なら財源と位置づけるべきではない。

負担のあり方は「全世代型」にすることが重要だ。せっかく育児世帯の支援を拡充しても、現役世代だけに費用負担を求めれば効果が相殺されてしまう。年齢で線引きせずに、高齢者を含む全世代で育児世帯を支える。負担能力に応じた協力を求める考え方を徹底する。こうした視点で負担の仕組みを決める必要がある。

この考え方に立つと、本来なら消費税が有力な財源案として浮上するはずだ。消費活動には所得と資産の両面が反映されるので、社会全体で世帯の能力に応じた負担を求めることができる。消費税法も少子化対策が消費税の使途の一つだと定めている。

ところが首相は22日のこども未来戦略会議で「消費税を含めた新たな税負担は考えていない」と述べ、消費税の議論を封印した。

政府は各医療保険に少子化対策を目的とした拠出金を求める案を検討している。だが所得で負担額が決まる社会保険料をベースとした仕組みでは、引退世代の負担が相対的に軽くなりかねない。

社会保険の負担増は事業主負担の増加を伴うため、厚生年金などの被用者保険の適用対象者を広げる改革にも逆風となる。会社員に扶養される配偶者は第3号被保険者として保険料を納めていないので、少子化対策の支え手から外れるという問題もある。最適な負担のあり方を探るため、消費税を除外せずに検討を進めるべきだ。

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