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再稼働原発も活用 社会支える担い手に 森本孝関西電力社長

脱炭素社会 創る

関西電力は2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロをめざす戦略をまとめた「ゼロカーボンビジョン2050」を21年2月に発表した。①需要側の脱炭素化②供給側の脱炭素化③水素社会への挑戦――を柱に据え、エネルギーシステムの将来像を示す内容だ。ゼロカーボンを新しい社会システム、新しい時代への挑戦と位置づける森本孝社長は「脱炭素社会を支えるプラットフォームの担い手になりたい」と挑む意気込んでいる。

「置き換える・減らす・創る」で挑む

ゼロカーボンビジョン2050では関西電力が「ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー」として顧客、ビジネスパートナー、国・自治体・研究機関などと連携しながら脱炭素社会の実現に向けデマンドサイド、サプライサイド双方のゼロカーボン化、水素社会への挑戦という3本柱に取り組むと表明した。

まずデマンドサイドでは「置き換える(電化)」「減らす(省エネ)」「創る(創エネ)」という3つの切り口でソリューション(解決策)を提供している。一般家庭で電気エネルギーをもっと使っていただけるよう、エコキュート(給湯器)など電化機器のリースと電気を組み合わせた「はぴeセット」を21年6月に始めたのも一連の取り組みの一つだ。オール電化は導入時の初期費用が課題だったが、その壁を取り除いた。

法人向けには人工知能(AI)で電力使用量を予測し、省エネ行動を助言するエネルギーマネジメントサービス「エナッジ」を、新電力のアイ・グリッド・ソリューションズ(東京・千代田)と共同で提供している。

輸送のEVシフトに力

世の中全体が電化シフトする仕組みを企業などと一緒に考えていきたい。輸送分野は電気自動車(EV)が徐々に普及してきたが、電気エネルギーの比率はまだ低い。トラックやバスなど車両の電化にとどまらず、充電・放電、運行管理も含め使いやすいシステムの構築を急ぐ。

大阪大学、阪急バスと電気バス向け充放電システム構築の実証実験を21年2月に始めた。走行中のEVに自動給電するシステムについてもダイヘン大林組と共同開発しており、25年の国際博覧会(大阪・関西万博)での実装をめざす。これとは別に、商用EV向けの一括受託サービスも検討している。

輸送分野の電化はデマンドサイドの脱炭素化で重要な位置を占めている。当社グループが運行管理などを含めて実際に活用すれば、他の業界の皆さんにも役立てていただけるよう、多様な経験を積み重ねていくことができるはずだ。あわせて、グループ会社を含め5000台以上ある社用車については一部の特殊車両を除き、30年をめどにEVかハイブリッド車にすべて切り替える。

サプライサイドでは、原子力発電の安全・安定運転実績を積み重ね、新技術にもしっかり取り組む。さらに再生可能エネルギーも力を入れる。19年に国内345万㌔㍗だった再生エネ出力を40年には900万㌔㍗にする。従来は30年代までに国内外合計で200万㌔㍗の新規開発を見込んでいた。社会ニーズを踏まえ、洋上風力発電を中心に、より高い目標に挑戦する。

25年度排出量半減にめど

再生エネ拡大に伴う需給調整の機能も含め火力発電の役割はこれからも続く。石炭が燃料の舞鶴発電所(京都府舞鶴市)ではCCUS(CO2の回収・利用・貯留)の実現に向け、分離回収や液化CO2輸送の実証実験を始めた。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業に協力している。

中期経営計画(21~25年度)では、国内発電事業に伴う25年度のCO2排出量を13年度比で半減する目標を設定した。水力、原子力、再生エネを合わせた「ゼロカーボン発電量」は19年度で387億㌔㍗時に達し、国内の主要10電力会社の中でナンバーワンだ。原発再稼働により、すでにCO2排出量は4割程度削減している。日本政府の削減目標(46%減)を上回る半減のめどは立っており、トップランナーとして役割を果たせる。

ゼロカーボンは新しい社会システム、新しい時代への挑戦だ。情報通信をはじめとするグループ会社も一丸となり、従来型の電力供給のみならず地域密着で利用者サイドに踏み込んだ社会や暮らしに役立つ新たな価値やサービスをそろえ、提供していく。50年の脱炭素社会を支えるプラットフォームの担い手になりたいと考えている。

再生エネ由来の水素、日豪で事業化調査


 国内では10基の原子力発電所が再稼働している。うち5基が2016年以降、順次再稼働した関西電力の原発だ。21年6月には、東京電力福島第1原発事故後の新規制基準で原発の運転期間を「原則40年、最長60年」とするルールができてから初の40年超原子力プラント再稼働となる美浜原発3号機(福井県美浜町)も運転を再開した。
 関電が保有する原発7基のうち一部は、意図的な航空機衝突のようなテロ対策など「特定重大事故等対処施設」の設置が遅れていた。このため、いったん運転を停止したプラントがあるとはいえ、施設の工事を終えて22年秋から23年夏にかけて順次運転を再開する見通しだ。
 ゼロカーボンビジョン2050では原発について「安全最優先を前提とした稼働率改善に向けた運用の高度化」「次世代軽水炉、高温ガス炉、小型モジュール炉(SMR)などを視野に新増設・リプレース(建て替え)の実現」を掲げた。
 森本孝社長は「原子力はゼロカーボン実現に向けて安定供給を維持するためにも必要な電源だ。そうした評価をいただくためにも安全性の向上を追求していく」と話す。また、原発で発電した電気で水素の製造も可能なため「原子力と水素は極めて親和性が高い」と説く。
 水素に関し、26年度まで6年間の予定で既設の火力発電所を活用した混焼・専焼発電の実証実験に取り組んでいる。NEDOのグリーンイノベーション基金事業に採択されており、水素の受け入れ・貯蔵から発電までの運用技術確立をめざす。
 21年度には日本とオーストラリアを結ぶ液化したグリーン水素の大規模サプライチェーン(供給網)構築の事業化調査に着手した。関電、岩谷産業川崎重工業丸紅の日本勢と豪企業2社が豪クイーンズランド州で再生エネを使いグリーン水素を製造・液化する。26年ごろに1日当たり100㌧以上、31年以降には同800㌧以上の生産規模を想定し、グリーン水素の製造技術、液化プラント建設、運搬船建造、資金調達、商用化モデルなどを幅広く検討する。
 「水素をどこでつくり、どのように運び、どう使うのか。大規模な社会インフラを整えなければならない。相当な覚悟をもって取り組む」と強調する。エネルギーのゼロカーボン化は電気エネルギーへの転換が難しい一部の産業用が壁となる。そうした分野には水素の可能性や期待が大きいといい、積極的に役割を担う考えを示していた。

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