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「エレキの神様」は反骨の開拓者 寺内タケシさん死去

ステージに立つ寺内さん(2015年4月)

18日に82歳で亡くなった「エレキの神様」こと、ギタリストの寺内タケシさんは1960年代半ば、来日した米ロックバンドのザ・ベンチャーズやエレキギターを弾いて歌った加山雄三とともに、当時のエレキブームをけん引した立役者だった。さらにベートーベンの「運命」や民謡の「津軽じょんがら節」などをエレキギターで演奏し、この楽器の可能性を大きく広げた開拓者でもあった。

寺内さんは戦時中、5歳のころからアコースティックギターを弾き始めた。家元だった母から小唄と三味線を習っていたが、本当にやりたかったのはギターで、三味線を学ぶことでギター演奏のヒントをたくさん得たと自伝「誰が為に俺は弾くのか」で明かしている。少年時代には電話機のコイルを使ってエレキギターを自作したという。

「寺内タケシとブルージーンズ」を結成したのは62年。日本を代表するジャズギタリストの渡辺香津美をはじめ、寺内さんに憧れてプロになった演奏家はたくさんいる。寺内さんを中心としたエレキブームが、67~69年ごろのグループサウンズの隆盛につながった。草創期の日本ロック界に大きな影響を与えた存在だった。

「レッツ・ゴー『運命』」のレコードジャケット

エレキブームが最高潮のころ、ある地方都市で「エレキは非行を生む」として「エレキ禁止条例」が出され、全国の学校でもエレキ禁止の動きが相次いだ。寺内さんは禁止条例を出した都市の教育委員会の職員に「あなた方の好きな音楽は何ですか」と尋ねたという。答えは「民謡とクラシックです」。寺内さんは「じゃあ、俺がエレキで民謡とクラシックをやってみるよ」と応じたのだった。

エレキのすさまじい速弾きでベートーベンの名曲を演奏する「レッツ・ゴー『運命』」(67年)は特に話題を呼び、その年の日本レコード大賞編曲賞を受賞した。寺内さんは自伝で「日本人独自の音楽」をやる必要性を強調したうえで「だから俺にとって、エレキで民謡をやることは当然であって、クラシックを独自に解釈するのは当然のことだと思うね」と語っている。

そうしたエレキの地平を開く画期的な試みの動機が「エレキは非行を生む」というレッテルに対する反発からだったというのが、なんともこの人らしい。エレキに対する誤解を解くため、全国の高校で演奏する「ハイスクール・コンサート」を74年から2017年までライフワークとして続け、その間に「エレキは非行を生む」はすっかり笑い話になった。寺内さんの反骨精神のたまものといえるだろう。

(吉田俊宏)

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