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カーボンニュートラル実現へ日本がすべきことは?

柿木厚司・JFEホールディングス社長(11月7日)

JFEホールディングスは、2002年に川崎製鉄とNKK(日本鋼管)の経営統合により発足した会社で、本年で20周年を迎えました。当社は純粋持ち株会社として上場しており、傘下に100%子会社の事業会社として、JFEスチール、JFEエンジニアリング、JFE商事の3社があります。

私たちの会社が主力としている鉄は自動車や橋、ビル、電化製品などあらゆるものに使われています。世界全体の生産量は年間で約19億トン、日本では9000万トン強にのぼり、当社ではその約3割を生産しています。鉄は加工がしやすくてコストも安く、リサイクル率は約93%に達します。親しみやすく、かけがえのない素材だと私たちは思っています。

世界でつくられる鉄の4分の3は高炉法と呼ぶ製造方法を使っています。低コストで高品質な鉄をつくれる一方で、鉄鉱石を石炭で還元する際に多くの二酸化炭素(CO2)を排出します。鉄スクラップを溶かす電気炉法ですと排出量を大幅に減らせますが、現状では高品質なものをつくるのが難しいという問題があります。

2050年にCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」という政府方針は、鉄鋼会社にとってとても大きな課題です。日本の製造業が出すCO2のうち約40%を鉄鋼業が占めています。基礎素材として広く使われており、我々の宿命と言えます。これを乗り越えないと生き残っていくことはできないのだと思います。今の段階でCO2排出ゼロで鉄をつくれる技術は世界的にも確立されていません。革新的な技術が実用化できるのは30年以降でしょう。それまでの間は、既存プロセス技術の向上、さらに高炉を電気炉に転換するなどして排出量削減に取り組んでいきます。

鉄鋼業は大変ですね、とよく言われます。確かにピンチなのですが、技術開発が進めば逆にチャンスになります。かつて日本の製鉄会社が世界一だったのは、臨海型の大型製鉄所を建設して高効率な製造方法を確立したからです。カーボンニュートラルを前提にした製造技術を確立すれば、新たなビジネスモデルができるはずです。

技術者ともよく話すのですが、今まで私たちが考えていたのは品質やコストが中心でした。省エネにも力を注いできましたが、カーボンニュートラルは全く違う発想です。できる鉄は同じものであり、現状では付加価値はつきません。

カギは発想の転換だと思います。CO2を出さないことに大きな価値を見いだし開発の焦点を当てる。そのためにカーボンニュートラルに向けた開発に大きな予算を取り、専門組織も作りました。社内での意識改革を進めています。技術者も含め関係する従業員の顔が輝いて見えるのは、希望があるチャレンジだからだと考えています。

自分たちの生活がどう変わっていくのか、変えざるを得ないのかを意識することが重要だと思います。モノの価値や社会構造そのものも変わってくるでしょう。そうでないと50年にカーボンニュートラルな社会は実現できないという気がします。

皆さんはどう思いますか。カーボンニュートラルを実現するために日本がすべきことは何なのか、皆さんの考えをぜひ聞かせください。

柿木厚司・JFEホールディングス社長の課題に対するアイデアを募集します。投稿はこちら(https://esf.nikkei.co.jp/mirai20221107/)から。

編集委員から

温暖化ガスがもたらす気候変動によって、世界で干ばつや水害などのリスクが高まっています。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では世界平均の気温上昇を産業革命前に比べて1.5度以下にとどめる目標を掲げました。とても高いハードルですが、深刻な食料危機や水没による国土の縮小などを招かないためにも、努力を続けていく必要があります。

温暖化対策には莫大な資金が必要になります。国によって経済状況や化石燃料への依存度に違いがあり、途上国も含めて足並みをそろえるのはもともと難しい面もあります。だからこそ国際協調が重要になってきます。

カーボンニュートラルへの対応を迫られているのは産業界だけではありません。私たち消費者も住宅をはじめ、暮らし方でどう貢献できるかを考える必要があるでしょう。インタビューで柿木社長が繰り返し指摘していた「発想の転換」と「意識改革」がまさに求められていると言えます。私たちがどれだけ自分事として考えられるかが重要になりそうです。(編集委員 半沢二喜)

◇   ◇

今回の課題は「カーボンニュートラル実現へ日本がすべきことは?」です。400字程度にまとめた皆さんからの投稿を募集します。締め切りは11月14日(月)正午です。優れたアイデアをトップが選んで、28日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイト(https://www.nikkei.com/business/mirai/)で紹介します。投稿は日経電子版で受け付けます。電子版トップページ→ビジネス→未来面とたどり、今回の課題を選んでご応募ください。

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