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排出ゼロ火力 再生エネを補完 小野田聡JERA社長

脱炭素社会 創る

脱炭素社会の創出にどう挑むのか。NIKKEI脱炭素プロジェクトに参画する企業のトップに戦略を聞く。第1回は東京電力ホールディングス中部電力が折半出資する日本最大の火力発電会社JERA。国内発電電力量の約3割を占め、液化天然ガス(LNG)取扱量が世界最大級でもある同社の小野田聡社長は、再生可能エネルギーと火力発電を組み合わせた電力安定供給の重要性と使命を訴える。カギを握るのが「ゼロエミッション火力」だ。アジアでの国際貢献も視野に動き始めた。

電力の安定供給こそ使命

2020年10月に公表した「JERAゼロエミッション2050」では、50年に事業活動に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。3つのアプローチで達成していく。

まず再生可能エネルギーとゼロエミッション火力の相互補完だ。再生エネを導入すると電力安定の調整がどうしても必要になる。今ある火力発電所でアンモニアや水素といったCO2を発生しない燃料を使う。アンモニアを増やした分だけCO2が減る。最終的にはアンモニア100%にする。ゼロエミッション火力はしっかりと技術を確立して普及させる。結果として再生エネの導入につながる。

2つ目は事業環境やインフラの整備状況など事情がまったく異なる国・地域に対し、それぞれにあったやり方で脱炭素に向けたロードマップ(工程表)を考え、提案する。3つ目はスマート・トランジション(賢明な移行)の採用だ。脱炭素の技術をみると、例えばCCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯留)は理論的に可能だが、技術の確立に向けてもう少し検討が必要だ。足元で使える技術を組み合わせながら、「できるものからやっていこう」というのがスマート・トランジションの考え方だ。

石炭火力の碧南火力発電所(愛知県碧南市)で今月6日、アンモニアを燃料とした小規模利用試験を始めた。IHIと共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて取り組んでいる。まず5号機のバーナーの一部を改造し、アンモニアを混ぜて燃やす。試験結果に基づき4号機のバーナーを改造、アンモニアの受け入れタンクや配管を設置して、24年度にはアンモニアを20%混ぜて運転する目標を掲げている。

アンモニア調達に課題

本格運用開始を20年代後半としたのはアンモニア確保にかかる時間を考慮したためだ。アンモニアは肥料や工業用途に使われ、国内使用量は年間で約100万㌧。出力100万㌔㍗の火力で20%の混焼をすると、年間50万㌧のアンモニアが必要になる。2基で混焼するだけで現在の国内使用量に匹敵してしまう。製造元からサプライチェーン(供給網)をきちんと整備していく必要がある。

ノルウェーの肥料大手ヤラ・インターナショナル、マレーシアの国営石油会社ペトロナスなどと協業を検討する。アンモニアの製造、輸送、受け入れまで国内外の大手企業と協調して安定調達をめざす。LNGのバリューチェーンでは上流からかかわっており、ノウハウや様々な企業とのつながりなどを持つ。こうした知見を生かし、アンモニアの大規模製造設備の運用を検討、製造原価を抑えたい。

当社の電源構成に占める石炭火力の比率はもともと低いが、非効率な石炭火力は30年までに全基を停廃止する。火力発電所の寿命は30〜40年だ。今後、運転を始める石炭火力もあるが、高効率の発電設備となる。碧南火力発電所で技術を確立し、他の発電所にもアンモニア混焼を取り入れていく。

水素、運用は30年代に

水素の混焼については30年代の本格運用開始をめざす。アンモニアは約マイナス30度、LNGは約マイナス160度で液体になる。しかし水素は約マイナス250度まで下げないと液体にならない。輸送効率を高めるのに必要な液化のエネルギーが大きく、輸送船や備蓄施設を含めてコストも膨らむ。経済性を考慮すると、供給網の構築にはしばらく時間が必要だ。

再生エネは洋上風力を中心に開発し、20年度末に120万㌔㍗だった出力を25年度には500万㌔㍗に引き上げる目標だ。出資した英国や台湾の洋上風力に人材を送り込み、ノウハウ獲得を急いでいる。入札中の案件を落札できれば国内洋上風力にも活用する。

アジア諸国に経済成長と脱炭素を両立できるよう提案し、相談に乗る。バングラデシュやフィリピンの発電事業者に出資しており、ゼロエミッションの実現を支援する。こうした国際貢献も「JERAらしさ」だと考えている。

手法違うもゴール同じ 「賢明な移行」めざす


 JERAは2015年設立で、現在は東京電力ホールディングス傘下の東京電力フュエル&パワーと、中部電力が折半出資する。燃料・火力発電事業、海外発電事業を順次統合し、19年に本格スタートした。アルファベット4文字の社名は「日本(Japan)のエネルギー(Energy)を新しい時代(eRA)へ。」が由来だという。20年度のLNG取扱量は約4000万㌧で世界最大級。発電電力量は約2450億㌔㍗時で国内の総発電電力量のおよそ3割に相当する。21年3月期の連結売上高は約2兆7300億円だ。
 以前からの電力自由化の流れに加え、東日本大震災後に国は電力システム改革と銘打って①広域系統運用の拡大②電力小売りの全面自由化③送配電部門の分離――を実施してきた。これに伴い、東京電力と中部電力が火力発電・燃料事業を切り離し、一つの会社にまとめたのがJERAだ。
 事業統合による相乗効果は新たな収益源の確保と合わせて20年度に約450億円。国内火力発電所の資材調達や定期点検などで生み出した。23年度には1000億円以上のシナジーを目標にしている。人事面では、21年4月に約4500人いる両社からの出向社員の9割が転籍。JERAとして初となる22年入社の新卒採用活動を始めるなど、単なる事業統合会社から一定の独立性を持った事業体へと転換を進めている。
 国内の電力需要は成長が見込みにくいことから海外に事業機会を広げていく。例えば、大規模洋上風力発電事業では英ガンフリートサンズ(運転中)のほか、台湾のフォルモサに出資。フォルモサは運転中、建設中、開発中と3カ所ある。小野田聡社長は「台湾は地震や台風など日本に近い自然環境条件があり、ノウハウや知見を国内で活用できるはずだ」と期待する。ほかに、米国やインドで太陽光発電や陸上風力なども手がける。
 脱炭素に向けたルールづくりを欧州が主導していることについて小野田社長は「ファイナンスを絞ることで化石燃料を市場から追い出そうとしているが、それを世界に押し付けても経済成長が著しいアジアはついていけない」と指摘する。広い大陸棚がある欧州では洋上風力発電で電気をつくりやすく、安価な再生可能エネルギーの供給が可能。国境をまたいだ送電網が電気の融通に役立つため、化石燃料から再生エネへの置き換えは比較的実現しやすいからだ。
 アンモニア混焼のゼロエミッション火力は「石炭火力の延命といわれたが、まったく違う」と反論。再生エネを拡大しつつ火力発電の〝調整力〟を生かしてCO2を減らすことが最も現実的なスマート・トランジションだと訴える。「脱炭素というゴールは同じ。国・地域に応じた手法の差を理解してもらう必要がある」という。

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