/

37%の食料自給率、どうやって高めますか?

中家徹・全国農業協同組合中央会会長(8月1日)

新型コロナウイルスの感染が拡大したとき、私たちは食料安全保障の大切さを改めて感じました。日本は日常的に消費する食料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。ところがコロナの影響で人やモノの国際的な移動が制限され、食品の生産や物流が停滞したからです。

さらにウクライナ危機をきっかけに、これまで想定していなかったリスクが顕在化しました。農業生産に不可欠な資材である肥料を海外から調達するのが難しくなったのです。ロシアが世界有数の肥料の生産国であることの影響です。肥料の多くを輸入している日本の農業にとって、作物の栽培を根底から揺るがす事態です。

国内の農業生産基盤が弱まることに対して、私たちはこれまでも警鐘を鳴らしてきました。農家の高齢化による生産者の数の減少と、それに伴う農地面積の縮小などです。肥料の価格が高騰したことで農業経営が一段と圧迫されており、生産基盤の弱体化がより進む恐れが高まっています。

食品価格の引き上げが毎日のようにニュースになっています。小麦や油などと違い、ほとんどの農畜産物はコストが上がった分を価格に転嫁できていません。肥料だけでなく、燃料価格なども上がっているので、現場からは「これ以上農業を続けるのは難しい」という声さえ聞こえてきます。

心配なのは、こうした実情を消費者にどこまでお伝えできているかという点です。私たちも情報発信に努めています。それでも経験したことのない危機的な状況にあることを十分にご理解いただいているのか懸念を感じます。

私たちは日本の農業を活性化するため「国消国産(こくしょうこくさん)」という考え方を提唱しています。国内で消費する食料は、できるだけ国内で生産しようという呼びかけです。でもこのままでいけば、国内で消費するものを生産する能力が足りないということになりかねません。食料自給率を高めるのも難しくなります。

リスクはほかにもあります。世界的な異常気象です。たとえ日本で大きな自然災害が起きなくても、日本が農畜産物の輸入を頼る国で深刻な天候不順が起きれば、価格が跳ね上がって日本の食卓を脅かしかねません。

海外の農業大国とは生産条件が大きく違うので、日本には国際競争力のない農畜産物が多くあります。なのに、農畜産物をどんどん輸入してきた結果、自給率はカロリーベースで37%という低水準となっています。国内でつくらなくても、海外から買ってくればいいという考えに慣れすぎているのかもしれません。

戦後の食糧難は遠い過去の話になり、現在は大量の食品ロスを抱える「飽食の時代」となりました。そういう状況で、自給率が低いのは問題だと言っても、なかなか実感を持ってもらえません。それでも最近の状況を見て「このままでは大変だ」という消費者の声が少しずつ聞こえてきます。

そこでおたずねします。どうすれば食料自給率を高めることができるのでしょうか。この状態のままで、将来もいまと同じ食生活を続けることはできるのでしょうか。大切な食を未来につなげていくため、いま何をすべきかを考えていただけたらと思います。皆様のご意見をお寄せください。

中家徹・全国農業協同組合中央会会長の課題に対するアイデアを募集します。投稿はこちら(https://esf.nikkei.co.jp/mirai20220801/)から。

編集委員から

食料自給率に関しては、カロリーベースと生産額ベースのどちらに注目すべきかという議論があります。生産額で見ると7割近くに達しており、日本の農業の姿が違って見えるからです。

単純にいえば、生産額ベースの数値は農業が産業としてどんな状況にあるかを示しています。海外産よりも付加価値の高い作物の生産に農業界が力を入れれば、それだけ生産額ベースの数値を高めることにつながります。

これに対してカロリーベースの数値は、国内生産で国民をどの程度「飢え」から守ることができているかを映しています。国内産で輸入を代替できれば自給率は格段に高まりますが、海外産と同じ効率で、国内でつくれる農畜産物はそう多くありません。自給率をいまより抜本的に高めるのは、現実的な選択肢ではありません。

ではどこまで高めるのが妥当なのか。そのためには弱体化が懸念されている食料の供給能力をどんな形で維持すればいいのか。ウクライナ危機はこの難題に応えることを私たちに求めています。(編集委員 吉田忠則)

◇   ◇

今回の課題は「37%の食料自給率、どうやって高めますか?」です。400字程度にまとめた皆さんからの投稿を募集します。締め切りは8月12日(金)正午です。優れたアイデアをトップが選んで、29日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイト(https://www.nikkei.com/business/mirai/)で紹介します。投稿は日経電子版で受け付けます。電子版トップページ→ビジネス→未来面とたどり、今回の課題を選んでご応募ください。

未来面

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン