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電池と膜で社会貢献 「第3の創業」に舵 小林茂日本ガイシ社長

脱炭素社会 創る

日本ガイシはカーボンニュートラルとデジタル社会という変革の波に乗るため、事業構造転換に舵(かじ)を切った。会社設立から100年あまり、セラミック技術で新たな価値を提供してきたが、グループ全体で2050年度の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロをめざしつつ、脱炭素社会に資する製品やサービスの開発を急ぐ。小林茂社長は第3の創業と位置付け「自ら再生可能エネルギーの電源開発に寄与する行動を取る」と旗を振る。

課題解決に存在意義、転換急ぐ

設立100周年を機に、従来の企業理念を「NGKグループ理念」に改定した。果たすべき使命を明文化したもので、その達成をめざす「NGKグループビジョンRoad to 2050」を21年4月に公表。柱の一つにESG(環境・社会・企業統治)経営を据え、50年までのCO2排出量ネットゼロなどを盛り込んだ「NGKグループ環境ビジョン」を策定した。

当社は日本に電力を普及させるため、高圧送電用の碍子(がいし)を国産化する目的で発足した。1919年の設立当時から今日まで、自動車の排ガス浄化用セラミックスや半導体製造装置用セラミックスなど、独自技術を活用して時代が求める社会課題の解決に努めている。

グループビジョンでは「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」ことをありたい姿として掲げた。そのため①ESG経営②収益力向上③商品の社会実装の強化④DX(デジタルトランスフォーメーション)推進⑤研究開発――の5つの変革によって企業を変えていく。

戦略2分野に重点投資

カーボンニュートラルとデジタル社会関連が売上高に占める比率は現在およそ30%。今後10年間に研究開発費を3000億円投じる計画だが、うち8割をこの2分野に充てる。2030年に売上高の50%、50年には80%を2分野で稼ぐようにする構想だ。碍子の生産が第1の創業、高度成長期の多角化とグローバル化が第2の創業だと考えれば、今回の取り組みは第3の創業という位置付けだ。例えば蓄電池技術を活用した新地域電力の設立、CCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯蔵)に貢献するサブナノセラミック膜技術の開発などを加速する。

「窯業・土石製品製造業」は日本の産業部門エネルギー起源CO2排出量の8%を占め、窯業を営む当社も社会的な責任が伴う。当社の19年度のCO2排出量は87万㌧だった。25年度には13年度(73万㌧)比で25%削減の55万㌧、30年度には半減の37万㌧、そして50年度までのネットゼロをめざしている。

25年度までにはすべての海外拠点の電力を再生可能エネルギー由来に切り替える。主力生産地の欧州では生産拠点すべてで22年1月までに再生エネに切り替えた。ベルギー、ポーランド、フランスなどで風力由来の電気を調達したり、グリーン電力証書を取得したりする。

国内では21年8月に名古屋事業所(名古屋市)など愛知県内の4生産拠点で、採掘から燃焼までの工程で発生するCO2をクレジットにより相殺(カーボンオフセット)した液化天然ガス(LNG)を導入した。

自ら電源開発に寄与も

21年12月に当社として初めてグリーンボンド(無担保社債)を発行して100億円を調達した。環境ビジョンを達成するための資金に充てる。主力のエネルギー源が何になるか決まっていないものの、セラミックスの焼成では燃料転換を進め、水素やアンモニアの次世代エネルギーを活用する。欧州の排出量取引は1㌧あたり1万円に達する。自らCO2を減らす努力をしないと、87億円の利益が吹き飛ぶ計算になる。再生エネの導入や省エネを組み合わせ、CO2排出量の抑制に取り組む。

当社のNAS(ナトリウム硫黄)電池を提供する代わりにCO2フリーの電力を供給してもらうなど、自ら再生エネの電源開発に寄与する行動を取らないといけない。米アップルや一部の欧州自動車メーカーでは部品の調達先にも「100%グリーン電力」を求めており、この流れは世界中で加速していく。

カーボンニュートラルでは社長直轄プロジェクトを進めており、4月以降に専門組織も置き、社内外に決意を示す。自らの脱炭素化だけにとどまらず、世界の脱炭素に資する製品・サービスを開発・投入していく。これが我々のパーパス(存在意義)だ。

独自の技術、マーケティング発想で実装へ


 「我々のセラミックスの実力は顧客企業に非常に高く評価していただいているが、社会実装していかないといけない」。日本ガイシの小林茂社長はこう力説する。その一環で、4月に電力小売りの分野に乗り出すのが恵那電力(岐阜県恵那市)だ。
 同社は日本ガイシが75%、恵那市と中部電力ミライズが12・5%ずつ出資し、2021年に設立した地域新電力。太陽光発電設備とNAS電池を自社保有し、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に依存しない安定的で自立した地域電力網の構築をめざす。発電した電気は恵那市役所や小中学校などの公共施設、日本ガイシグループの工場に供給する。電力コストを抑えつつ、災害時の非常用電源にも役立てる。
 ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使い、NAS電池にためた再生エネの電気をトラッキングできるようにする実証実験も、リコーと共同で始める。蓄電池にためた再生エネ由来の電気だけを取り出せるようになれば〝電気の銀行〟も夢ではなくなる。「世の中を一変させる可能性がある」として、官民連携の恵那モデルを全国に広げていくことにも意欲を示す。
 日本ガイシは脱炭素社会に役立つ豊富なリソースを持つ。02年から商用販売するNAS電池はその一つで、世界で出力約70万㌔㍗・容量約490万㌔㍗時(22年1月末時点)が使われている。電力使用量のピークカット・シフトやマイクログリッドに幅広く用いられ「風力発電にNAS電池を併設すれば出力抑制をしなくても済む」ため、再生エネの拡大を後押しする。
 電池分野では、安全性の高い亜鉛2次電池「ZNB」や、あらゆるモノがネットにつながるIoTなどに生かせる小型・薄型のリチウムイオン2次電池「エナセラ」も持つ。
 CCUSで期待されているのがサブナノセラミック膜だ。ナノメートル(100万分の1㍉)以下の分子を大きさや吸着性の違いで分離できる。米テキサス州で日揮グローバル、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と、CO2の大気放出抑制と原油増産を両立する技術の実証実験中だ。産業排ガス向けのCO2分離膜も開発済みで、30年の実用化をめざす。
 次の100年を担う基礎技術は確立している。「当社はマーケティングの発想が乏しかった。発想そのものを変え、脱炭素の実現へ様々な事業パートナーと『オールジャパン』で取り組みたい」と意気込む。

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